9月15日の明治安田J1リーグ第29節、FC東京と東京ヴェルディが激突した「東京ダービー」で、決勝ゴールを挙げたのは長倉幹樹だ。走るスピードそのままに左足のアウトサイドに乗せて決めた美しいループシュート。素晴らしいセンスをまたも見せつけた。

上写真=マルセロ・ヒアンに抱きかかえられながらガッツポーズ。長倉幹樹が驚きのゴールを決めた(写真◎J.LEAGUE)

■2025年9月15日 J1第29節(観衆:37,424人@味スタ)
FC東京 1-0 東京V
得点:(F)長倉幹樹

「後ろの選手は助かると思う」

「走ってる流れに身を任せてシュートしました」

 やはりこの男、ただものではない。0-0のまま進んだ60分、長倉幹樹が左足アウトサイドに乗せたループシュートが、虹がかかるような軌道できれいにゴールに吸い込まれたのは、そんなナチュラルな感覚のなせるわざだった。

 GKキム・スンギュがゴールキックを一気に前線へ、マルセロ・ヒアンが落下点に入ったところでもう走り出していた。

「ヒアンが競り勝ってくれて、それを信じて走り込んだので、枠に飛ばせてよかったです」

 マルセロ・ヒアンがヘッドで流したボールが右方向から回り込んでくるように飛んできたが、そこで走るスピードを落とさずに、歩幅を無理やり利き足の右に合わせるのではなく、自然に左足を伸ばして優しく乗せた力みのなさ。

 松橋力蔵監督もその一撃を称えた。

「この大きな舞台でしっかり点を取って、チームを勝たせたということは非常に素晴らしいと思います。ライン間をうまく攻略して、ということだけではなく、相手が間伸びしてるような状況でそこをうまく使うことができた、非常に素晴らしい得点でした」

 誤解されがちだが、松橋監督はていねいにパスをつなぐスタイルだけを求めているわけではなく、ゴールから逆算して攻めるチームを作ろうとしている。その意味では、ロングキックとヘッドとフィニッシュという3つのアクションによって、たった8秒で決めたこのゴールも、FC東京が求める象徴的な一発だったと言っていい。

 長倉は初めての東京ダービーでも臆することはなかった。東京ヴェルディの最終ラインが背中からどれだけ激しく当たってきてもするりとかわす。あちこちで選手が倒れて主審の笛が鳴り、ぶつ切りになって逆に落ち着かない展開だったが、その一瞬の集中力で上回り、ゴールにつなげた。

 そんなヒーローは「たまたま自分になってラッキーでした」と謙虚だった。

 倒れていた選手にボールを当ててCKを取ろうとした場面では大ブーイングと警告を受けた。主審には「あれはサッカーじゃない」とたしなめられた。東京Vのサポーターに両手を合わせて謝罪の意を示し、「改めて振り返るとよくないことをしました」と反省した。その上で、「みんなきつくて、どっちに転ぶか分からないゲームを持ってこれたのは大きい」とチーム全体でもぎ取った自信には胸を張る。

 それを自ら表現したもう一つが、ラストプレー。相手の最終ラインで横パスを回すのを見て3度追い、最後にはスライディングでクリアしてタッチラインを切ったところで勝利を告げるホイッスルが鳴った。

「ああいうプレーは後ろの選手は助かると思うので、前線ができるだけああいうプレーができればチームのためになるかなと思って」

 チームのためにゴールを決めて、前線から守備に走る。頼もしいこと、この上ない。


This article is a sponsored article by
''.