8月23日の明治安田J1リーグ第27節で、サンフレッチェ広島は東京ヴェルディに3-0で快勝した。中2日で迎えたアウェーゲームで、勝利を手繰り寄せたのは中村草太が決めたカウンターからの一発。大卒ルーキーがこの日も生き生きと、のびのびとピッチを駆けた。

上写真=62分に中村草太がカウンターから決めた。直後の喜びはやや控えめ(写真◎J.LEAGUE)

■2025年8月23日 J1第27節(観衆:17,480人@味スタ)
東京V 0-3 広島
得点:(広)中野就斗、中村草太、新井直人

「ポストに当たってやばいと」

 サンフレッチェ広島が東京ヴェルディを3-0で気持ちよく下した一戦で、勝利をぐっと引き寄せたのはルーキーの一撃だった。

 1-0で迎えた62分、中盤で奪ったボールをジャーメイン良に預けてそのまま足を動かし、リターンパスを受けて一気にドリブル開始。追いすがる相手に倒されそうになりながら踏ん張って突き進むと、GKマテウスを右にかわしてゴールに蹴り込んだ。

「やっぱり持ってるかな、って」

 殊勲の中村草太は清々しく笑った。

「ディフェンダーの後ろに広大なスペースがあって、ちょっと足を引っ掛けられて、倒れたらレッド(退場処分)なんじゃないかなと思いながら、倒れるか倒れないかちょっと迷っちゃってて、でも倒れずにいってよかった」

 タックルを振り切るスピードは自慢だ。そして前に出てきたマテウスをかわしたシーンも冷静そのもの。

「チップキックもと思ったんですけど、キーパーとゴールまでの距離が長くて、ディフェンダーが1人帰ってくるのが見えたので、スピードのあるチップじゃないと無理だなと。それはイメージが沸かなかったので、かわした方が余裕はあると思って」

 トップスピードに乗っていても周りは見えていた。

「でも、ちょっと外側にかわしちゃったので、そのまま右足で打ったらディフェンダーもカバーに入っていましたし、少しでもゴールに近づこうと左に持ち替えました」

 体が流れて角度が制限されないようにゴールに正対したことで、シュートコースが見えた。

「ニアが空いてたんで、ディフェンダーもそっちに戻りながらの形だったんです。その逆を突ければと思ってファーを狙いました。(相手の動きが)見えてたというか、予測ですね」

 完全に見切っていた。そして、左足でゴール左へ。ポストに当たって転がり込んだ。

「左に持ち替えて巻くところまではイメージできていて、ポストに当たってやばいと思いましたけど」

 それでも入ったことで「持ってる」と笑った。そのプレー同様に、一連の「解説」も切れ味鋭かった。

 持ち味のスピードが勝利を手繰り寄せたが、その功績を独り占めするつもりはなく、チームとして完結させたゴールだと強調する。

「(前の試合から)中2日だということもあって、苦しい時間帯の方が多かったですけど、それでも前からプレスにいったチームの狙いが、ショートカウンターに集約されています」

 そのとき、中島洋太朗、田中聡、川辺駿が齋藤功佑を囲むようにしてプレーを制限した。苦しくなって中央に戻したところを中村が狙ってマイボールにした。きれいに張った網で絡め取る、鮮やかなボール狩りである。

 ミヒャエル・スキッベ監督も絶賛の言葉を惜しまない。

「非常に重要な役割を担う選手になったと思っています。つい最近まで大学生でしたが、いろいろなポジションもできますし、重要な働きができるようになってきています。裏に抜けることもできれば、得点に絡んで、アシストもできるし、点も取れる。自分たちには欠かせない選手になっています」

 中村も、スキッベ監督に感謝の言葉を返す。

「大学生ルーキーでも監督が使ってくださるのが、自分の成長につながっています。自分だけでここまで来たわけじゃないし、チームあってこその自分。チームメートに感謝しながら、自分の良さは遠慮せずに出していきたい」

 仲間が奪ったボールをきれいに仕留めたこのゴールは、今季リーグ戦5点目になった。

「二ケタというのはアタッカー陣はみんな目指していると思うし、自分も目指していきたい。でもやっぱりチームの勝利が優先なので、パスするところの判断はもっともっとこう高めていきたい」

 5つのゴールに加えて、すでにアシストも6を記録している。取って取らせて、何でもできる不可欠なルーキーが、まだまだ数字と勝利を積み重ねていく。


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