またも悔やまれる黒星になった。8月10日の明治安田J1リーグ第25節で、FC東京は優勢に進める時間が長かったものの、鹿島アントラーズの一発に屈した。その中で、光になったのはマルセロ・ヒアンと長倉幹樹のコンビではないか。今季初めて、一緒に先発でプレーした2人の可能性とは。

上写真=何度もゴールに迫った長倉幹樹。マルセロ・ヒアンとのコンビのこれからが楽しみだ(写真◎J.LEAGUE)

■2025年8月10日 J1第25節(観衆:40,939人@味スタ)
FC東京 0-1 鹿島
得点:(鹿)田川亨介

「自分は入れ替わりを狙っていく」

 キックオフからまっすぐにゴールに迫った。わずか2分にマルセロ・ヒアンが放った右ポスト直撃のシュートが、この試合に対するチームの大きな意欲を示していた。

 意気揚々とゴールに迫るマルセロ・ヒアンをサポートしたのが、長倉幹樹だ。6月に浦和レッズから期限付き移籍で加わってから、リーグ戦で2得点、天皇杯で3試合連続ゴールと好調で、移籍後初得点となった横浜F・マリノス戦の得点が6月のJ1月間ベストゴールに選ばれたアタッカー。

 キックオフからマルセロ・ヒアンとコンビを組むのは、この試合が初めてだった。最前線に立つマルセロ・ヒアンに寄り添うようなポジショニング。守備で鹿島アントラーズの最終ラインからのパスコースを規制するときには2トップのように前に出て、攻撃のスイッチが入ったときにはマルセロ・ヒアンの周辺で顔を出す。

 冒頭の2分のシュートシーンも、マルセロ・ヒアンが長倉に落として走り、リターンパスを受けて放ったもの。9分にはGKキム・スンギュがロングキックでマルセロ・ヒアンに送り、その落としたボールを受けた長倉が右に走る長友佑都に展開してチャンスにつなげた。

 ほかにも、クロスに対してマルセロ・ヒアンがニアに走れば、中央に構え、あるいは中間ポジションに潜り込んでボールを引き出してからラストパスを送るなど、外と中、前と後ろをつなぐマグネットの役割を果たした。

「ヒアンは(体が)強いので、自分がその下に入れば落としてくれます。強い相手にはヒアンに対応してもらって、自分は入れ替わりを狙っていくというのは、いい関係でできたと思います」

 長倉もマルセロ・ヒアンも、強さと速さを兼ね備えるタイプ。この2人を前線で組み合わせることで、それぞれのパワーがより増すことを印象付けた。

「(そのポジショニングは)チームの戦術としてありましたし、ヒアンとの関係はいい感じで、お互いがお互いを見てできたと思っています」

 長倉も納得のコンビネーションだが、まだその有用性を「証明」できたとは言い切っていない。なぜかと言えばもちろん、ゴールが生まれなかったから。

「勝たなきゃいけない試合だったので、自分のところでチャンスがあったのに決めないとこういう結果になってしまうな、と」

 25分に右からの長友のクロスに右足で合わせたが、GK早川友基にはじき出された。33分にも、長友の絶妙のセンタリングに逆サイドから飛び込んだが、わずかに目の前をボールが通り過ぎた。82分には右からの長友の浮き球のパスを胸で止めて落ち際で右足を振ったがブロックにあう。88分にはバングーナガンデ佳史扶が送った左からの低いセンタリングに左足で合わせたが、大きく枠を外した。

 押し込みながら勝ち切れないもどかしいゲームの責任を自分に向けた形だが、このほかにも多くのチャンスに絡んでいるのも事実だ。

 真夏の雨の夜に出現した魅力的な「マルセロ・ヒアン&長倉幹樹」のペア。その関係性がさらに深まれば、面白いことになりそうだ。


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