6月29日の明治安田J1リーグ第22節で、東京ヴェルディが川崎フロンターレを1-0で下した。実に25年ぶりの川崎F戦の勝利だったが、価値ある決勝ゴールを決めたのが深澤大輝。ベンチ入りもままならない苦しい時期にも真摯にサッカーに向き合ったご褒美の一発だった。

上写真=深澤大輝は練習通りに決めたJ1初ゴールを喜んだ(写真◎J.LEAGUE)

■2025年6月29日 J1第22節(観衆:22,326人@味スタ)
東京V 1-0 川崎F
得点:(東)深澤大輝

「誰か1人の力に頼るチームではない」

 32分、デザインされたCKが見事に実った。

 右から森田晃樹がニアに送り、谷口栄斗がヘッドで流すと、ファーで待っていた深澤大輝が蹴り込んで見事に先制してみせた。これが、自身のJ1初ゴール!

「ニアに蹴るのは決めていて、栄斗が一番前で僕が4番目という場所を決めてたんです。本当に狙い通りでした。シュートは難しかったですけど」

 考える暇もなかったほどの一瞬だった。

「そらしてくれるのは分かっていた分、足をうまく合わせれば入る感じはありました。ゴールも近かったので、考える暇もなくというか、ポンポンみたいな感じで、感覚というか、フィーリングが良かったですね。ハーフボレー気味だったんですけど、足を振りすぎずに当てるだけで入るかなと」

 このあとの集中守備も見事で、結局これが決勝ゴールとなって1-0で逃げ切りに成功。これがなんと、川崎Fを相手に2000年のファーストステージ第8節で2-0で勝って以来、25年ぶりの勝利になったのだ。

 当時、深澤は1歳8カ月。

「25年! 僕が生まれたぐらいなんですけど(笑)。いまJ1で戦える喜びがあって、自分たちで上げた分、絶対に落としちゃいけないですしね」

 そんな歴史的勝利を自らのゴールでもぎ取ってヒーローになったが、今季は5月3日の第14節まで出場なし。城福浩監督も、出番がない中でもトレーニングに向かう真摯な姿勢を称えた。第15節の横浜FC戦から出番を得て5試合続けて3バックの中央に構え、前節のセレッソ大阪戦とこの日は左ウイングバックでプレーした。

「メンバー外になるのはサッカー選手としては一番悔しいことだし、ピッチに立てないのは自分に腹が立つ。そうなると練習に身が入らない選手もいると思いますけど、置かれた環境でどれだけ成長できるかを自分自身に問いかけてきました。試合に出たら絶対にやってやるって思っていて、横浜FC戦からチャンスが回ってきました。自分の全てをぶつけよう、1試合にかけようという思いは今年は特に強くなっていて、それはメンバー外のときの練習から生きていると思います」

 逆サイドから潜り込んでフィニッシュ、という決勝ゴール、まさに練習の成果だ。

「そこは今週、ものすごく練習でやりました。相手が4バックで、相手のサイドハーフがあまり守備で戻らないという情報もあったので、僕たちが5枚入っていって大外で2対1ができる状況も練習していました。だからああいうシーンが生まれたので、今週の練習がすごく生きたと思います」

 そのCKだけではなく、CKを獲得するまでのチームの戦い方があってこそのチャンスだとも説明する。

「全員の意識で、ロングボール一辺倒にならないように、つなぎつつ押し込めている時間が長かった。だからこそセットプレーが多かったと思います。そこで1点取りたいと思ってたので、前半のあの時間帯で取れたのはすごく大きかった」

 川崎Fが押し込む時間が長かったものの、対抗するために長いボールで押し戻すだけではなく、勇気を失わずにパスで前進した効果を実感していた。

「試合に出られなかったときに、森下(仁志)コーチから、お前が練習で若手に背中で見せてやれ、と言われてきました。今日はJリーグという舞台で見せられたと思います。でも、誰か1人の力に頼るチームではないし、練習では仮想の相手チーム役を全うしてくれるチームメイトがいて、全員でいい準備が今週は特にできました。今日は僕がこうやって点を決めましたけど、次は誰が出て点を決めるか分からないですし、いい競争をして、いい瞬間を作っていけたらいいと思います」

 若手も中堅もベテランも、監督もコーチもスタッフも、ファンもサポーターも、みんながその頼もしい背中を見ていた。


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