上写真＝小野裕二は先発に抜擢され、30分には左ポスト直撃の惜しいシュートも（写真◎J.LEAGUE）
■2025年6月25日 J1第15節（観衆：20,905人＠U等々力）
川崎F 3-1 新潟
得点：（川）脇坂泰斗、神田奏真、大関友翔
（新）奥村 仁
「J1に残留させることが使命」
小野裕二は2025年のシーズンで、リーグ戦は7試合しかプレーしていなかった。5試合が先発で2試合が途中からの出場という内訳。コンディションの調整に時間がかかった時期もあり、ゴールもまだない。
樹森大介前監督が解任され、入江徹監督が後を継いでわずか2日のセッションだけで迎えた川崎フロンターレ戦。小野は先発に抜擢された。
「前で自分の持ってるクオリティーを発揮してくれ、という話で使ってもらったんですけど、結果が出なかったのでしっかり反省していきたい」
信じて起用してもらったことへの感謝の思いを具体的な結果で表現できなかった悔しさが先に立つ。監督が変わるということは選手にとっても一大事で、その長いキャリアにあっては何度経験しても、苦々しい責任から逃れることはできない。
「監督が変わるというのは、自分たちにとって良くないことというか、責任は自分たちにもある。選手一人ひとりがしっかり感じてるとは思いますけど、クラブが決断した以上、残された僕たちはこのチームをJ1に残留させることが使命。もうそこに切り替えてやるということです」
その初陣には1-3で敗れた。今季10敗目である。だが、これまでの敗戦のときのような悲壮感は不思議となかった。
「チームがやろうとしていることが、割とできていたんじゃないかな」
弱みを見せないように虚勢を張っている、というわけではない。
「試合全体を通して何かネガティブな要素があったかというと、そこはあまり感じなかった。ただ、結果として勝てなかったというその現実はしっかり受け入れないといけない」
フラットにそう分析することができたのは、プレーと精神の両輪がバランスよく回り始めたという実感によるものだ。
まずはプレー面。五分五分の確率でも一発で相手の裏を取るような勝負を仕掛けていくこと。立ち位置を細かく変えつつ距離感は失わずに、素早くボールを密集に差し込んで相手を動かしながら穴を突くこと。どちらがいまの選手のキャラクターに適しているかを振り返れば、やはり後者であり、だから入江監督は川崎F戦でもう一度そこに立ち返ることを決断した。
もう一つは、「心の立ち位置」とでも言うべきハートの問題。
「監督が変わったあとの一発目の試合はすごく大事で、そこで勝つか負けるかは非常に大きいと思います。結果的に今日は勝てなかったですけど、ただ最後までファイティングポーズを取ってゲームに入れたと思いますし、そこでいかに結果に持ってくるかというプレッシャーを自分たちにかけていけいい」
あきらめてはいないという意志と、それを言葉ではなく行動で示すことが、悲壮感を振り払う原動力になっている。
だが、負けは負けだ。まだこのチームに足りないことについて、小野はこう思っている。
「みんな必死に走ってますけど、もっともっと犠牲を払うような、自分のマークではないところにも走ったり人のことを助けられるような、もっともっとそういうチームになっていかなければいけないんじゃないかな」
