浦和レッズがクラブワールドカップを前にした最後の試合で逆転勝利を収めた。6月1日の明治安田J1リーグ第19節で横浜FCを2-1で下したが、渡邊凌磨は左ウイングとして起用された。マチェイ・スコルジャ監督が「クラブワールドカップで必要になる」と狙いを持った戦い方だった。

上写真=渡邊凌磨が左サイドでチャンスメーク、あるいは中に入ってフィニッシュ役も努めた(写真◎Getty Images)

■2025年6月1日 J1第19節(観衆:39,995人@埼玉)
浦和 2-1 横浜FC
得点:(浦)サミュエル・グスタフソン2
   (横)ルキアン

「ポジションチェンジは許されている」

 浦和レッズの攻撃陣は、松尾佑介が最前線に立ち、右ウイングに金子拓郎、中央にマテウス・サヴィオ、左ウイングに渡邊凌磨が立った。これまでは渡邊が中央でマテウス・サヴィオが左というベースのポジションが多かったものの、流れの中で入れ替わってプレーすることも多かったから、特別な驚きはない。

 ただこの日は、キックオフのときには渡邊が中央にいたものの、あとはほとんどが左に開いてからゴールを目指す形だった。

「スタッフ間でも凌磨のポジションについてはたくさん話し合ってきました」

 そう明かすのは、マチェイ・スコルジャ監督だ。

「最も得点を取っている凌磨をサイドに置くのは奇妙な判断に見えるかもしれません。でもこれは、クラブワールドカップで必要になるかもしれない形です。今日のウイングとしての凌磨は悪くなかったし、トップ下のサヴィオもサイドにも顔を出しながらいいプレーを見せていたと思います。選手たちはどんどんポジションチェンジしてプレーすることを許されていますし、重要なのはボールを失ったときの守備の役割を果たすことです」

 攻撃の自由と守備の規律に基づいたこの「解説」を聞く限り、これは「世界仕様」の一つだということになる。

 開始早々の7分にさっそく効果が出た。中央でボランチの安居海渡、トップ下のマテウス・サヴィオ、ボランチのサミュエル・グスタフソンで回してプレスを無効化すると、左に走った渡邊へ展開。すかさずにニアに鋭く送って、内側から左サイドバックの荻原拓也を突っ込ませた。これは左に外れてしまうのだが、「左の凌磨」を生かしてゴールに迫ったシーンだった。

「守備をしながら出ていくということを意識していましたね」

 渡邊はそう振り返る。横浜FCが3-4-2-1システムなので、ウイングバックに自分の背後を取られれば危険になるからだ。

 一方で逆にこちらが右サイドで攻撃を作る場合には、最後の一瞬に左から中央に潜り込んできてボールを引き出し、ラストパスを供給したりフィニッシャーにもなった。シュートが得意だから、右で崩して左で決める、という攻撃パターンも成り立つ。

 ただ、マテウス・サヴィオとポジションを入れ替える、というルールではなかったのだという。

「サヴィオと入れ替わるというよりも、松尾と入れ替わることが約束事だったんです」

 松尾佑介は1トップの位置から左右に流れるのが得意な選手。足が速いし左利きだから、左に流れて受ければクロス、あるいはシュートというルートが見えてくる。

 その松尾は、渡邊とのポジションチェンジを心地よく感じていた。

「基本的に僕が彼の動きを見てから動き出すほうが効率はいいと思うので、それを意識していました。でも逆に、僕に合わせて中に入ってくれたりもして、構造上、しっかりいるべき場所に立ってくれるので、ノッキングすることもなかったです。バランスは非常に良かったと思います。クロスするシチュエーションも作れていましたしましたし、左サイドバックもうまく使えて攻撃できていました」

 69分に松尾がピッチを去るまで、この左サイドのコンビネーションを楽しむことができた。スコルジャ監督の言うようにこれがクラブワールドカップを見据えた布陣なら、世界でのプレーが楽しみになってくる。

「監督も僕は10番が一番いいのは分かっている、と言ってくれています。それに、全然不満もないんで」

 サイドバックでもどこでも、試合に出ることができるなら喜んでプレーしてきた渡邊ならではの意欲だ。

 アルゼンチンのリーベル・プレート、イタリアのインテル、メキシコのモンテレイと名門だらけのグループステージを勝ち抜くためには、相手によって、スコアによって、時間帯によって戦い方を変える必要がある。そんなとき、さまざまなポジションをこなせる渡邊の器用さがチームを助けるのは間違いない。


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