浦和レッズにとっては、今季アウェーでの初勝利だった。4月13日の明治安田J1リーグ第10節で、FC町田ゼルビアに2-0で快勝。その2つのゴールはどちらも「スピード」という共通項があった。特に象徴的な2点目はどのようにして生まれたのか。そこには、浦和に欠けていたものを取り戻した実感があった。

上写真=松尾佑介が歓喜のジャンプ! 高速カウンターで仕留めた追加点は見事だった(写真◎J.LEAGUE)

■2025年4月13日 J1第10節(観衆:44,363人@国立競技場)
町田 0-2 浦和
得点:(浦)マリウス・ホイブラーテン、松尾佑介

「2本で入るのがサッカーの面白さ」

 浦和レッズが気持ちの良い勝利を手にしたのは、38分の追加点が大きかった。たったの8秒で仕留めた早業ゴール。決めた松尾佑介は言葉に力を込める。

「2点目は大きかったと思うし、僕自身は今年ゴールがなかったので、個人としてもこれからさらに乗っていけるんじゃないかなっていう自信になった。僕にとっては非常に大きいゴールでしたし、今日はチームにとっても大きいゴールだったと思います」

 1-0でリードして迎えたそのとき、GK西川周作が自慢の左足で低く鋭いパスをセンターサークルにいた渡邊凌磨に届けた。

「あれも自ら学んだシーンなんですけど」と、西川は試合の中での反省をすぐさま生かした。

「その前に凌磨に蹴ったときに少し大きくなってしまったボールがあって、あれじゃダメだなと。うまく修正しながら低い弾道で攻めると決断して蹴ったボールで、練習でかなりフィーリングも良かったですし、今日の体の感覚的にもいってみようかなっていう意識だったので、うまくそれが得点につながって良かったです」

 受けた渡邊は右足でフリックして、前のスペースに優しく送り込んだ。

「点が入るときはああいう形で入るので、後ろからどれだけビルドアップしても入らないときは入らない。2本のパスで点が入るのがサッカーの面白さだと思うんで、それは体現できたかな」

 トップ下に入った渡邊は相手の3バックと駆け引きしながら捕まらないポジションを探り続けていて、何度もフリーで受けるシーンがあった。町田にとってはやっかいだっただろう。

「もともと最終ラインの3枚をどう引き出すかはずっと考えていました。最初からスペースに立って攻略しようと思ったけど、ずっと見られている感じがしたので、佑介と近いところ、くっつくかくっつかないかぐらいのところにいるようにして。それで(金子)拓郎と(マテウス・)サヴィオがアクションを起こして、ボールをトラップするかダイレクトで蹴るかとなったときに初めて動き出すように意識したら、相手もすごく戸惑ってましたね」

 そんな駆け引きで、このシーンでもふわりと中盤で浮くことができた。

 そして、そのパスを受けた松尾は少し左にコースを取ってドリブルで突き進んだ。

「あそこは(渡邊と)目が合ったので来るなと感じていましたし、本当にいいところに落としてくれました。前向きで良いコース取りの素晴らしいカウンターアタックだったと思います」

 松尾は自画自賛だ。フィニッシュの瞬間は何も考えずに左足でボールをたたいたという。

「とりあえず振らないとな、と。相手の前に入ってキーパーが寄せてきたので。気持ちで押し込みました。変に切り返したりせずにね」

 昌子源の足に少し当たってホップするように飛んだボールがGK谷晃生の上を破り、ネットを揺らした。

「素晴らしいランナー」

 そんな松尾のアタックを、西川は落ち着いて見ていた。

「惜しいシーンはいままでもあったから、決めてくれって思うよりは、外してもいいよっていうメンタルで見届けていました。入ったらラッキーぐらいの気持ちでいたんですけど、松尾選手が素晴らしいゴールを決めてくれて」

 松尾はこの日、1トップに入った。ということは、その俊足をゴールに最も近いところで生かす狙いは明白だった。マチェイ・スコルジャ監督もその意図を明かす。

「今日のストライカーは佑介でしたけれど、彼は素晴らしいランナーであり、スキルを持っていますので、背後のボールを増やした試合でした」

 勝利へと近づける追加点は、まさにその狙い通りだったのだ。それに、振り返ってみれば先制ゴールもスピードを生かしたことでもたらしたものだった。

 15分に生まれたゴールそのものは、右CKを金子が短くつなぎ、マテウス・サヴィオが中へ、マリウス・ホイブラーテンが左足のアウトサイドで巧みに流し込んだものだ。そのCKを獲得したシーンで生かしたのが、まさに「速さ」だった。

 右サイドで金子が縦の渡邊に預けて一気に外を走り、リターンパスをもらってニアへ鋭く届けると、突っ込んだ松尾は打てなかったが、その流れから最後は長沼洋一のシュートが相手に当たりゴールラインを割った。

「​​相手のスペースにボールを放り込むことは大事だと思っていました」と渡邊が高速アタックの意図を示せば、松尾も「僕が1トップのときは狙っている形」「相手を引き出してからしっかり走ったり、僕が受けるのもそうだけど、深さを作ることができた」と裏抜けの効用に胸を張る。

 これまでのようにターゲットタイプのチアゴ・サンタナではなく、軽やかに素早く走り回る松尾を1トップにすることで、町田を振り回すことができた。スコルジャ監督にとっても「佑介は左ウイングとしても素晴らしい仕事をしてくれる選手ですけれど、このストライカーというのも一つのオプションになります」と重要なきっかけになった。

 そして何より、西川が渡邊にパスを送り届けたその決断が重要な示唆になる。

「無難なプレーも大事ですけど、ああやってリスクを負うプレーもやっぱりチームにとっても大事になってくると思います。得点できてみんな勇気を持てたと思う」

 GKからピッチのど真ん中を刺すようにパスを通す大胆さ。それこそがこのチームに足りなかったのだと示すかのようだった。


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