上写真=田中隼人が染野唯月と激しく争う。激しい守備で攻撃サッカーを支える(写真◎J.LEAGUE)
■2025年3月29日 J1第7節(観衆11,888人/@三協F柏)
柏 0-0 東京V
「絶対に負けたくない」
東京ヴェルディのシャドーに入った染野唯月と、最前線の木村勇大と、バチバチのバトル。
「楽しかったですね」
柏レイソルの若きセンターバック、田中隼人はにやりと笑った。攻撃面ではなかなか相手を突き崩せずに今季初めてのノーゴールに終わったが、守備ではシャットアウトに成功。特に原田亘、古賀太陽、田中で組んだ3バックの集中力は鋭かった。
「立ち上がりから相手のペースになってしまいましたけど、これまで前半に失点する展開が多かった中で、前半45分をゼロで終われたのはチームとして一つ成長してきているポイントだと思います。そこは評価してもいいのかな」
3バックの中央で引き締めた古賀はうなずく。今季からリカルド・ロドリゲス監督がチームを率いて、その特徴である変幻自在のビルドアップの出来に注目が集まるが、それを最後尾から下支えしているのが、この3バックである、攻撃の起点としての機能に目がいくが、それも大前提として堅固な守備があってこそ。
昨季、J2のV・ファーレン長崎で経験を積んで戻ってきた田中は21歳のDF。今季2試合目の先発となったこの90分は、目の前の戦いに集中できたという。
「対面する染野選手や木村選手は去年もたくさん点を取っていますし、アンダー世代でも一緒にやったことがあるので、特徴は分かっていました。絶対に負けたくないと思いながら、結果的にクリーンシートだったので、そこは良かったなと」
その田中のバトルを頼もしく見守った古賀は、3バックの結びつきに胸を張る。
「今日はすごく安定していたと思います。これまでの相手以上にラフなボールを背後に入れてきましたし、前線に体の強い選手が多かったので、その特徴を生かそうとしてきたんだと思います。そこに対してもうまく予測したりいい判断を重ねながら、うまく対応できました」
そんな最後尾の守備力をさらに高めるために、田中が掲げたのは自らのレベルアップ。木村と対峙して反省点が浮き彫りになったという。
「木村選手のような体の大きな選手がいて、そこに対してはもう少しじっくり対応しても良かったかもしれません。自分より体が大きいので、食いつきすぎると体をうまく使って反転させられるシーンもあって、トラップした瞬間を狙うとか、飛び込むけれどあまり飛び込み過ぎない方法だったり、一発でいくのではなくてじっくり対応する工夫もすればよかった」
そんな個々の細やかな守備の技術の積み重ねがあるから、組織的な守備が成立する。その根底にあるのは、基本中の基本ではあるのだが、密接なコミュニケーションだと古賀は言う。
「ヴェルディはクロスが多いという情報も入っていましたし、自分たちもクロスからの失点がいくつかあって、最終局面はしっかりボールと人に強くいくようにということを、日頃から監督に求められています、誰が誰につくのか、あとは誰が誰に受け渡すのか、そこはうまくコミュニケーションを取りながらできていました」
7節を終えて、暫定だが3位につけている。長いシーズンを乗り切るためには守備の安定が最優先されるだけに、3バックに不安のないいまの戦いを最後まで続けていけるかが柏の躍進の鍵を握りそう。それが攻撃サッカーの花を咲かせることになるのだから。