東京ヴェルディは15日に行われた明治安田J1リーグ第6節で名古屋グランパスに逆転勝利を飾った。前半、持ち味をほとんど出せなかったチームはなぜ、後半逆転することができたのか。そのポイントを探った。

上写真=後半、シャドーからウイングバックにポジションを移した東京Vの新井悠太(写真◎J.LEAGUE)

新井が意識する『広島の中村草太』

 東京ヴェルディが名古屋グランパスに先制されながら逆転して2―1で今季2勝目を挙げた。とはいえ、ここまで未勝利の名古屋が立ち上がりから高い強度で仕掛けてくる圧力に押され21分には先制を許した。さらにキャプテンの森田晃樹が負傷退場を余儀なくされる苦しい展開で、前半は何とか0ー1で終えることができたという内容だった。

「前半は相手が特に中盤で非常に激しく来るのはわかっていました。対してこのチームの課題ですけれども、どうしても受けてしまう。やり合わないというか、チームの課題が露呈したような前半でした」と試合後に話した城福浩監督は、ハーフタイムに映像でやるべきプレーを確認するとともに、激しく叱咤したという。

 そのためもあってか、後半は見違えるような動きを見せ東京Vがペースを取り戻す。ここでの交代は右ウイングバックの宮原和也に代えて山見大登を起用しただけだったが、これが効果てき面だった。

 前半は左のシャドーでプレーした新井悠太を左のウイングバックへ、山見がシャドーに入り、左ウイングバックだった翁長聖が右へ回った。チーム全体の動きも良くなったが、新井、山見の左サイドはより活発になり攻撃の起点となった。

 55分に新井が左サイドを抜け出して折り返したボールを受けた染野唯月がシュート。これは右に外れるが、反撃の狼煙が上がった格好で、その5分後には染野が中盤から持ち上がってつないだボールから山見が同点ゴールを決めた。

画像: 後半から登場し、1ゴール1アシストの活躍で逆転勝利に貢献した山見大登(写真◎J.LEAGUE)

後半から登場し、1ゴール1アシストの活躍で逆転勝利に貢献した山見大登(写真◎J.LEAGUE)

 さらに68分には新井のパスから山見が中央を抜け出してシュート。これはバーを越えたが、その5分後には右CKを山見がゴール前へ送り、綱島悠斗がヘッドで決め逆転に成功。名古屋の反撃もかわして勝ち点3を手にした。

「ハーフタイムに修正して、ピッチに送り出しましたけれど、あの後半頭からの気迫とサッカーを、前半から自分たちがしっかりやれるというところを表現できれば、もっともっと高いものを目指せるチームになり得ると思います」と後半のプレーには指揮官も合格点を与えた。

 左サイドを活性化して逆転勝利に貢献した新井は今季東洋大から加わった選手だが、すでに特別指定選手として一昨シーズンからプレー、城福監督の厳しい要求も理解している。開幕戦こそ途中出場だったが、第2節の鹿島アントラーズ戦からはスタメン出場が続いているのは信頼の証だ。抜群のスピードを生かした縦への突破、スペースへの抜け出しはチームの大きな武器になっており、シャドーでもウイングバックでも効果を発揮する。特にこの日示したようにやはりスピードのある山見との左サイドのコンビネーションは相手にとって脅威になった。

 本人も「シャドーでもウイングバックでもやるべきことは変わらない。(ポジションを変えた山見と)守備のところ確認しただけでした。後半は質の高いサッカーができました」と納得できるプレーだった。

 ただし、まだ得点と言う結果が出ていないことは不本意だろう。特に「意識する存在」というサンフレッチェ広島の中村草太が公式戦8試合で6ゴールを挙げていることは刺激となっているはずだ。前橋育英高校の同期で技を競い合った仲。中村が明大で関東大学リーグ優勝とMVP、得点王、アシスト王まで独占した大学サッカーきっての存在だったとはいえ、新井も大学最後のタイトルである全国大学選手権(インカレ)では東洋大を初優勝に導き、決勝戦では1-0の勝利の決勝点も挙げてこちらもMVPに輝いた。

 上位を争う広島のように多くのチャンスが訪れるわけではないが、上昇機運に乗るきっかけをつかんだように見えるチームで、ゴールと言う結果が伴えばさらに個人としての成長も進んでいくはずだ。

取材・文◎国吉好弘


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