横浜F・マリノスが3月16日の明治安田J1リーグ第6節でガンバ大阪を2-0で下した。序盤から押し込まれる展開だったが、その嫌な空気を振り払ったのが遠野大弥の先制点。左足を振ってきれいに決めてみせ、後半の植中朝日の追加点もお膳立てして、背番号9がノッてきた。

上写真=遠野大弥がJ1では移籍後初ゴール。新しいホームで結果を残した(写真◎J.LEAGUE)

■2025年3月16日 J1第6節(観衆23,169人/@日産ス)
横浜FM 2-0 G大阪
得点:(横)遠野大弥、植中朝日

「僕の良さは足を振れること」

「もしかしたら、左足のほうが得意かもしれない」

 遠野大弥が力強くチームを勝利に向かわせるゴールを決めたのは、20分のことである。右サイドでヤン・マテウスがボールを収めたとき、静かに中央のスペースに入っていった。

「中に入ってきてビルドアップに参加したり、攻撃に関わっていくように常に言われていて、あそこ入ったらフリーになるよ、と。そういった良さが出たと思います」

 左サイドハーフがオリジナルポジションだが、相手のボランチの死角から中央のスペースに忍び込んだ。すると、体を後ろに向けていたヤン・マテウスから角度のあるボールが出てきた。

「目が合ったので、来るなって思って準備して」

 慌ててネタ・ラヴィが強く寄せてきたのだが、そこをすり抜けた。

「あそこで1人かわせたことが、自分のドリブルのスイッチになりました。そこが良かったかな」

 そのままやや左にコースを取りつつ、得意のスピードで運んで、左足を振った。

「前を向いた瞬間に相手のサイドバックの選手が中を切ってきたので、外側にドリブルして思いっきり足を振ってみようと、打ったら入りました」

 打ったら入った、というのは、もしかしたら謙遜かもしれない。対角線に蹴り込んだボールがきれいにコースを射抜いて、右サイドネットが軽やかに揺れた完璧なフィニッシュだったのだ。

「雨も降っていましたし、低くて鋭いシュートを左足でも右足でも打てるのは自分の良さで、特徴が出たと思います」

 川崎フロンターレから、大きな覚悟を胸に隣のクラブである横浜F・マリノスに移籍した。そして、これがJ1ではうれしい移籍後初ゴールになった。新しいホームで決めた一発は、格別だっただろう。

「本当にホッとしていますし、勝利したことが一番いいことですけど、やっぱり結果で示していかないといけない。その自分の良さをもっと出していければなと思ってます」

 序盤からガンバ大阪に主導権を握られて、自陣で守る時間が長くなっていた。その苦しみを一発でひっくり返してみせた価値は大きい。さらには、75分には植中朝日がこちらも驚きのミドルシュートを決めるのだが、カウンターを発動させるパスを送ったのが遠野だった。

 3月11日のAFCチャンピオンズリーグエリートの上海海港戦でも開始2分に先制弾を決めていて、こちらのゴールも左足で流し込んでいる。

「正直、右足より左足のほうが、思いっきり振れるという意味では得意かもしれません。僕の自論ですけど、右足だとコントロールが効くけれど、左足だと多少難しいダメ元なシュートでも、まあ左足だからっていう余裕があったりするので」

 もちろん、日々シュートを打ち込むトレーニングの成果なのだが、利き足ではない逆足でのフィニッシュが伸びやかなのは、こんなところに理由があるのだという。

 3月14日が26歳の誕生日。2日遅れで自ら祝った会心のゴールで、チームにリーグ初勝利をもたらした。遠野もエウベルとのポジション争いを繰り広げながら、「僕の良さはとにかく足を振れること」を全面に押し出してJ1とACLEの優勝を見据えて戦っていく。


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