アルビレックス新潟が、勝てない。3月15日、明治安田J1リーグ第6節でFC町田ゼルビアとのアウェーゲームに臨んだが、0-1で敗れてまたも初勝利はお預けだ。このタイミングで3バックに変えて挑み、うまくいかずに後半に4バックに戻したのはなぜなのか。そして、ピッチの上での実感とはどんなものだったのか。

上写真=サポーターに深々と頭を下げる選手たち。この日は3バックが機能せずに停滞して、初勝利はまたもお預け(写真◎J.LEAGUE)

■2025年3月15日 J1第6節(観衆10,152人/@Gスタ)
町田 1-0 新潟
得点:(町)西村拓真

画像: ■2025年3月15日 J1第6節(観衆10,152人/@Gスタ) 町田 1-0 新潟 得点:(町)西村拓真

「シンプルに、実力不足」

 6試合で3分け3敗の勝利なし。アルビレックス新潟が深くて暗い未勝利の森に迷い込んでいる。

 ここまでの5試合は最悪の状態であるというわけではなかった。ゴールが生まれなかったのは1試合だけで、複数得点も2試合ある。リードしながら、あるいは同点のまま逃げきれずに勝ち点を取りこぼした4試合が苦境の原因で、守備の微調整は必要だろうが、ゲームは作っていたしチャンスも積み上げていた。

 だから、第6節のFC町田ゼルビア戦を迎えるに当たって、キックオフから3バックで臨んできたことは驚きを持って迎えられた。そして、後半開始からこれまでの4バックにすかさず戻したことは、最初の45分の失敗を物語っていた。

 シフトチェンジの主な理由を、樹森大介監督の言葉を借りて記しておくと、「センターバックにケガ人が出た(稲村隼翔が前節で負傷)」こと、「相手の前線の3枚が強烈だったので、バランスを考えた」ことだった。

 ところが、その「3枚の盾」は町田が誇る「3枚の矛」に突き破られた。25分の決勝点だ。オ・セフンにポストプレーから右に展開され、相馬勇紀のドリブルにジェイソン・ゲリアがついていけずに縦に抜かれてセンタリングを許し、舞行龍ジェームズと森昂大の間に入ってきた西村拓真にヘッドで決められている。

 もちろん、失点の原因は3バックだけではないが、守備を強化するための特別な策があっけなく壊されてしまったわけだ。

 ウイングバックの藤原奏哉と堀米悠斗も押し込まれたから、実質的には5バック。後ろに重たく前に人をかけられない配置の宿命として、前と後ろをつなぐボランチが困惑する。新井泰貴がその難しさを明かす。

「(前に出て)真ん中のスペースを空けてしまうと相手に好き勝手やられてしまいますし、かといって、相手の前線に強力な選手がいてそこのケアも必要だったので、攻守において常に探りながらの展開になってしまいました」

 このシステムで戦い慣れている町田の方に一日の長があるのは、むしろ当然のことだった。ボランチの役割で比較すると、シャドーがポジションをずらして空けたスペースにボランチがランニングをかけて裏に抜けて崩すなど、攻撃のバリエーションが豊富だ。新潟はこの1週間のいくつかのセッションで3バックをこなしただけだから、そこまで落とし込んでいない。

 守備に狙いを定めた3バックが破られると、攻撃にも悪影響を及ぼした。ボールがほとんど前線に運ばれていかないのだ。

 3バックの相手に対して、これまでは4バックで配置にズレを起こしておいてから、コンビネーションで相手を割っていった。しかしミラーゲームを仕掛けたことによってその強みを生かすことができなくなり、さらには、誰が誰をマークすればいいのかを相手に明かしてしまうことになった。町田のマンツーマンの守備が厳しかったと樹森監督は振り返ったのだが、むしろ、町田が守りやすい状況をこちらから作り出してしまったことになる。

「こっちが守備ではめるための3バックだったけれど、得をしたのは町田だった、という感じですね」

 キャプテンの堀米悠斗が視線を落として唇をかむ。相手の攻撃のストロングを抑えるためだったはずなのに、相手の守備のストロングを引き出してしまう、というなんとも皮肉な45分。

 もう一人のボランチ、秋山裕紀はこうした流れも織り込み済みではあったとしながら、前半のうちにピッチの中で解決できなかったことを悔やむ。

「それは分かっていた上でチームとしてはやりましたし、相手のロングボールに対してリスペクトをした分、5バックで当てようという狙いはありました。もうちょっといろいろな解決策はあったかなと思いますけど、チームとしてはそれをやろうと決めたので、それはもうシンプルに、やっぱり実力不足かなと思います」

 後半に4バックに戻した開始早々に、秋山が攻め上がって左足で強烈なシュートを放った。しかし、枠内シュートはこの1本だけだった。

「決めきるチャンスもありましたし、失敗したからといってすべてがパーになったわけでもない。まだまだ自分たちが取り返せる時間もありました。でも、最後のクオリティーの問題もあったし、一つひとつのエラーが今日は多かったかな」

 まさに秋山の言う通り、苦しんだ前半も、勢いを取り戻したかに見えた後半も、ゴールを奪うことができなかったことがすべてだ。ただ、不完全燃焼の理由として3バックがもたらした45分間のぎこちなさがあることは否定できない。

「もちろん自分としてはやりたいこともあるけれど、チームとしての約束事がありますから正直難しい部分はあります。いずれにしても、特に自分たちの陣地での守備でもっと整理する必要があると思っています」

 それが苦しい90分があぶり出した秋山の反省点であり、堀米もこう考える。

「やっぱりもう少し手数をかけて、全員でいいバランスで前進していくことで、押し込んで、セカンドボールを拾って、2次攻撃、3次攻撃というのが自分たちの形だと思う」

 自陣での守備の整理、そして攻撃での原点回帰。2週間後に迎える次のガンバ大阪戦で勝利をもぎ取るためにはそのことが肝になる、というのがピッチでの実感である。


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