上写真=高宇洋(左)と橋本拳人がFC東京の中盤で存在感を増している(写真◎J.LEAGUE)
■2025年3月8日 J1第5節(観衆19,654人/@味スタ)
FC東京 0-0 湘南
消灯後の深い語り合い
橋本拳人と高宇洋。2試合続けてキックオフからボランチのコンビを組んだ。湘南ベルマーレ戦は数多くのチャンスを逃し続けて勝てなかったが、FC東京の「体幹」が出来上がりつつあることを示すことになった。
ともにボール奪取もテンポの良いパスも得意。松橋力蔵監督が3バックを採用するチームにあって、3バックの前、1トップ2シャドーの後ろ、両ワイドの内側――いわばヘソの部分に当たるこの2人が安定していれば、私たちの体に軸ができれば手足をスムーズに動かせるのと同じように、誰もが心置きなくその攻撃の能力を覚醒させることができる。
「常に声を掛け合っていますし、一人がボールを捕まえにいったらもう一人はカバー、というように、いい距離感は意識してできているかなと思います」
今季、スペインのSDエイバルから復帰してから、ホームの味の素スタジアムでの初先発となった橋本は、新しいパートナーとの関係をそう表現した。「距離感」という定義の難しい概念を、パス交換や守備のアタック・アンド・カバーを2人で関わり合うことによって成功させて表現し、湘南の生きの良さを消し込んだ。
「まだ組んで間もないですけど、いいバランスでできていると思います。拳人くんもボールを奪うところですごく特徴が発揮されていますし、お互いにいい距離感でやろうというのは常に声をかけています」
高がうれしそうに話すと、そのコメントまで無意識のうちにシンクロしていく。
キャンプでは同部屋で、毎晩、消灯したあともサッカーについて深く語り合ったという。「それが本当にいい時間でした」と高はうなずく。
湘南対策という点でも2人は重要な役割を果たした。橋本が説明したのは、走る質のこと。
「受け渡しはできるときはしっかりしますけど、どうしても今日はスライドが多くなるゲームだったので、そこはシンプルに走りきることも大事だし、受け渡しができるのであれば、そこに留まって入ってくる選手を捕まえることも両方大事でした」
湘南は右に左に、あるいは前にとダイナミックにボールを動かして、選手たちが迷いなくなだれ込んでいくのが魅力の一つ。対応するためには、ボランチがいかに正しいポジションを取り、そして取り続けるかが重要なミッションだった。高もその重要性を意識してプレーした。
「今日は狙い通りでしたね。相手のオフェンシブハーフが外に流れるので、それに僕らがつられると中が空いてしまう。そこは我慢しながら、縦と横のズレに対しては、左であれば(ウイングバックの安斎)颯馬を縦に出して、テツ(3バックの左の岡哲平)を左にスライドして、真ん中は僕と拳人くんで消すということがいい形でできていました。本当に練習のまま、ほとんどチャンスを作らせない形はできてたかな」
松橋力蔵監督は「相手の矢印を折って、そこから裏返してしっかりと攻撃につなげたことが良かった」と、守備から攻撃へのスムーズな移行に手応えを感じていた。だが、橋本も高も「前の3人にいいボールをもっと渡したい」とまたもや言葉をシンクロさせた。漂う名コンビ誕生の予感。それは、高もひしひしと感じている。
「しゃべらずともいいバランスが取れて意思疎通できているので、時間を重ねればもっといい関係になっていくのかな」
さて、完成の時はいつ?