3月8日に行われる明治安田J1リーグ第5節において、FC東京はホーム、味の素スタジアムに開幕3連勝を含む4戦無敗と好調な2位・湘南ベルマーレを迎える。今シーズンから松橋力蔵監督の下で3バックを採用するFC東京は、ここまで2勝2敗の成績で8位。同じく3バックを採用する相手から勝利をつかめるかーー。

上写真=FC東京の俵積田対湘南の鈴木雄斗の攻防は見どころの一つになりそうだ(写真◎J.LEAGUE)

文◎北條聡

2位湘南の強みは巧みな誘導と規制

勢いに乗る相手を前にして、いかに勝機を見いだすか。いまだ発展途上の『力蔵トーキョー』にとって、難しいミッションを迫られる一戦だろう。今週末、味の素スタジアムに湘南ベルマーレを迎え撃つ明治安田J1リーグ第5節がそれだ。

開幕からFC東京の戦績は2勝2敗の五分。鹿島アントラーズとの前節はセットプレーの2発に沈んで0-2と敗れたものの、攻撃面で改善の兆しが見られるなどポジティブな要素もあった。とりわけ、ビルドアップが安定し、ボールの保持率が60%に達している。個々の立ち位置に調整が入り、プレス回避の道筋ができたことが大きい。高宇洋と今シーズン初先発を飾った橋本拳人のダブル・ピボットが巧みな位置取りでボールを引き出し、攻撃の起点となった。

また、互いの布陣のミスマッチから生じるギャップ(溝)を効果的に使う場面もあった。例えば、左サイドを切り崩す仕掛けがそうだ。3バックの左を担う岡哲平がボールを持った局面で左ウイングバックの長友佑都がやや低い位置に下がり、そこへ鹿島の右サイドバック(濃野公人)が食いつくと、その背後(左サイド裏)のスペースに左シャドーの俵積田晃太がすかさず走り込んで、まんまと岡の縦パスを引き出した。

カバーに回った鹿島の選手は中盤センターを担う樋口雄大で、一対一の勝負ならスピードで勝る俵積田に分がある。その点も計算に入れた《対4バック使用》の攻略法の一つと言えるかもしれない。もっとも、これらの新手が今回の湘南戦でも生かされるのかどうか。何しろ、鹿島とは基本布陣もチーム戦術も全く異なる相手なのだ。

ゲームの焦点を探る前に、まずは湘南の基本情報から整理しておきたい。敵を知り、己を知れば何とやら――だ。まだ4試合を消化したに過ぎないが、クラブ史上初の開幕3連勝を含む、4戦負けなしの好成績で2位につける。しかも相手は鹿島、セレッソ大阪、浦和レッズ、横浜F・マリノスと戦力値の高いチームばかりだ。結果はもちろん、充実した戦いぶりを見ても、この快進撃は偶然とは言い難い。最終的には15位に終わったものの、実に26年ぶりの4連勝を飾った昨シーズン終盤から、すでに予兆はあった。

最大の強みはピッチに立つイレブンがまるで一体の生き物のように動く組織力だ。2021シーズン途中からチームの手綱を握る山口智監督も「その点はJリーグで一番」と自負するところ。実際、日々の積み上げによって、相手を見ながら巧みに立ち回る術を身につけつつある。つまりは『機に臨み、変に応ずる力』だ。

いや、相手ばかりではない。味方を見ながら、しかと立ち回る姿が板につき、指揮官の求めてきた《選手同士のつながり》が足し算の域を超え、掛け算的な効果をもたらしている。攻守問わず、イレブンが次々と鎖のようにつながっていく光景は鮮やかだ。

湘南と言えば、相手に休む暇を与えない高速のトランジションとアグレッシブな攻守が看板だった。そうしたカラーを継承しつつ、山口体制下で丹念にボールポゼッションの質を高め、いまや資金力に恵まれたタレント集団とも互角に渡り合うチームに格上げされた感がある。昨シーズン半ばから適材適所が一気に進んだのも大きい。

慎重に起用のタイミングを探ってきた若者たちを次々とスタメンに抜てきしてチーム力を格段に引き上げた。最前線の核として見事に覚醒した主砲の鈴木章斗や、ボランチから3バックの一角に転向し、鮮やかなプレス回避でビルドアップの要となっている鈴木淳之介らがその代表格だ。

さらに今シーズンは2トップの一角に昇り竜の福田翔生が定着。相方の鈴木章と絶えずタスクを分担しながら、出色のパフォーマンスを演じている。また、鹿島から獲得した韋駄天の藤井智也を右のウイングバックに据え、同ポジションを担ってきた鈴木雄斗を3バックの右に起用。これによってビルドアップの質が高まるとともに、右サイドから崩す選択肢が大きく広がった。アンカーの田中聡がサンフレッチェ広島に移籍したものの、跡目を継いだ奥野耕平が好プレーを演じており、ネガティブな要素は少しも感じさせない。現時点におけるチームプレーの精度、速度、練度を含む完成度の高さでは、やはり一枚も二枚も上手――と、考えていいだろう。


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