上写真=今季就任したリカルド・ロドリゲス監督(左から2人目)が最高の笑顔。そのチーム作りは快調なスタートを切っている(写真◎J.LEAGUE)
■2025年3月2日 J1第4節(観衆51,009人/@埼玉ス)
浦和 0-2 柏
得点:(柏)小屋松知哉、垣田裕暉
「ボールが飛んできた」
柏レイソルが浦和レッズをアウェーで倒した。前半のうちに2点をリードして、後半に押し込まれたものの崩れずに守り切り、2-0の快勝である。
鮮やかなダイビングヘッドで2点目を突き刺したのは垣田裕暉。「右サイドで(小泉)佳穂くんがいい形でボールを持ったので、ファーにスプリントしたらボールが飛んできました」と笑いながらしてやったりの表情だった。「いい形でボールが前に入るシーンが増えて、いい形で相手を崩せている部分が多いので、チャンスは去年より必然的に多くなってるなと思います」と、リカルド・ロドリゲス監督のスタイルで攻撃に多くのメリットがあることを実感している。
そのゴールをお膳立てした小泉は、昨年までの4シーズン、浦和でプレーしてきた。古巣に対してテクニシャンぶりを改めて見せつけるように思う存分に躍動して、2アシストで輝いた。
小屋松知哉が決めた1点目は右で受けて左に大きくサイドチェンジしたもので、「構造的に空く場所で受けられたし、構造的に空く場所に出せたので、すごく意図したプレーではありました」とまさに狙い通り。上記の2点目も右寄りから完璧なクロスを届け、「自分に余裕がある状態でボールが回ってきているので、ビルドアップが本当にいいということに限ります。自分がいいポジションに立っていればボールが出てくるので」と、決定的なアクションに集中できる状態でボールを届けてくれた仲間の貢献を称えた。
それを総称して、こんな言葉で表現している。
「チームとして、あるいは個人でちょっとずつアドバンテージを作って、それを次の人に渡してあげる、みたいなことがすごくできている」
最終ラインから一つずつていねいに組み上げていく作業が、いまの柏の強みになっている。
ビルドアップ部隊
小泉は後ろからボールをつないでくれる選手たちのことを「ビルドアップ部隊」と称した。主にGKと3バックとボランチのメンバーを指すといい、「彼らは本当にうまい」とリスペクトを示した。
その一人が、3バックの中央に立つ古賀太陽だ。「取りに来る相手にビビらず、後ろからビルドアップしていって、はがして逆サイドに展開していく、という形は何回も作り出せていて、イメージはみんなが共有できた」と胸を張る。
その一列前にアンカーとして立つのが熊坂光希。プロ1年目の昨季はリーグ戦では10試合の出場に留まったが、今季は4試合すべてにフル出場している。この日はほとんどフリーでボールを受けて悠々とさばくリズムメーカーになった。
「そういう立ち位置を自分が意識して取っているところがあるし、自分がターゲットになったらそれで他の選手が空いてきますし」
配置の上では浦和の1トップのチアゴ・サンタナやトップ下の原口元気に厳しく監視されそうなものだが、彼らを煙に巻くポジショニングで2人のどちらにも近寄らせずにボールを循環させた。
その熊坂を含めた中盤から前の立ち位置に工夫があった。開幕からは1トップと2シャドー、その後ろにボランチが2人並んだが、前節のセレッソ大阪戦では後半から木下康介を投入して2トップにして、熊坂のアンカーシステムに代えてから見事に逆転している。その勢いをかって、この浦和戦はキックオフから熊坂が中盤の中央に立ち、その前に小泉と原川力を配置し、最前線は垣田と木下を並べる2トップだった。
これがビルドアップにどんな好影響を及ぼしたかというと、古賀が解説するには「ターゲットを2人置く形にして、うまくそこを使いながら進入する回数は増えたかな」だった。どちらも体が強くてボールを収めてくれる。「前に2人いると困ったときの選択肢になって、2人で解決してくれる回数はすごく多かった気がします」とパスの出口がゴールに近い場所に2つあるメリットを明かす。
実際に2点目がそうだ。3バックで横にボールを動かして左へ、杉岡大暉が中の原川に差し、左外へ。小屋松知哉がワンタッチで前に出すとそのコース上には垣田と木下がいて、垣田は見送る形にはなったが木下がポストプレーで落とすと、受けた原川が右に展開、小泉がゴール前にクロスを送って垣田が仕留めている。
小泉の言う「ビルドアップ部隊」が組み立てて、屈強なFWが前線に2人並んで打開してフィニッシュ、というメカニズムの有効性が鮮やかに証明されたシーンだ。
最前線に立てた「ツインタワー」の張本人も、気持ちよくプレーしている。垣田は木下との関係性をこう話す。
「距離感を意識していますね。2トップで一人の選手がつぶれても一人がボールに向かうというシーンは今日も出せていたと思います。相手が強く当たりに来る中で、近くにもう一人がいるので収めやすいですし、その関係性がいい形でできたんじゃないかなと思います」
次の未来を先取り
守備にも効果がある。再び小泉の解説。
「前に出てくる相手のサイドハーフと横にスライドするボランチを走らせることが、あとで効いてくるだろうという考えはありました。相手はどうしても受け身のランニングなので、メンタル的にも負荷がかかっていたはず。チーム全体としていい形でできたかなと思います」
これがボールを持つことの大きなメリットだ。C大阪戦でもボールを動かして相手の足を止めることで、木下の逆転ゴールを生み出している。
一方で、浦和戦の後半にはゴールを狙う相手の圧力が強まったことで、受け身になった。後半開始から木下に代えて渡井理己を投入してシャドーに置き、原川を一列下げて熊坂と中盤の底に2枚を並べる従来の配置にした。それは、押し込まれたことに関係があるのだろうか。
古賀が言うには「それもあるかもしれない」。
「自分たちも形を変えて、2トップではなく1トップにしましたけど、前半に康介くん、カキくん(垣田)に中距離のボールを入れて拾っていく作業を繰り返したことを、後半はできなくなった。それで、相手もより圧力かけてきたところに対してはがしていく回数を増やせませんでした」
ボールの「出口」が一つなのか二つなのかで、バランスは大きく変わるというわけだ。それでも集中力は切らさず、ゴール前に次々とボールを送り込んでくる浦和の攻撃をストップし続けた事実は大きい。
リカルド・ロドリゲス監督はその守備への称賛も忘れない。
「特にサイドからのクロスによる攻撃がとても危険だと分析していましたが、しっかりと選手たちが対応してくれて素晴らしい試合をしてくれたと思っています」
これで首位に立ったが、小泉も「まだ始まったばかりだから。いいときも悪いときも必ず来る」と淡々としている。しかし、「強度」という名のパワーとスピードが優勢の時代に、このスタイルを細部まで磨いて次の未来をさらに先取りするような「うまくて強い」チームを現出させれば、Jリーグはもっと面白くなる。