上写真=8分に先制した加藤陸次樹が雄叫び!(写真◎毛受亮介)
■2024年12月1日 J1第37節(観衆27,105人/@Eピース)
広島 5-1 札幌
得点:(広)加藤陸次樹、東 俊希、トルガイ・アルスラン、ピエロス・ソティリウ2
(札)鈴木武蔵
「正直、あんまり見てもいなかった」
主役は加藤陸次樹だ! ゴール、アシスト、そしてPKも奪って、5-1の大勝にチームを導いた。
8分にはチームを勢いに乗せる先制ゴール。
「ここのところ、得点力が失われていたので、そういった意味ではあの先制点は僕自身からしても大きかったですし、チームとしての活力になったんじゃないかな」
リーグ戦では3連敗中で、しかもここ2試合はノーゴール。加藤にもゴールは生まれなかった。ホーム最終戦で、そんな不安をかき消した。左からの東俊希の絶妙のセンタリングに合わせて走り込むと、右足で左へ流し込んだ。まさにゴールにパスをする、教科書通りのフィニッシュだった。
「1回ボールを流したら、キーパーの重心が僕のほうに動くのが見えたんです。コースはそれほど良くなかったんですけど、そこでずらした結果、逆を突けました」
ほんの一瞬の駆け引きとていねいなフィニッシュワークがもたらした、ハイレベルの先制弾だった。
2-1で迎えた55分にはトルガイ・アルスランがPKでリードを2点に広げるのだが、このPKを獲得したのが加藤の献身。「常に狙っている」というGKへのバックパスに猛然と突っ込んで交錯、ファウルの判定になった。そのまましばらく、足を痛めて突っ伏した。
立ち上がって、PKを蹴ろうと思ったら…。
「僕、蹴ろうと思ったんすけど、痛がってたらもう準備が終わってました。そこで自分が行くのもちょっと雰囲気が違うからやめました」
そう笑わせたが、活躍はこれで終わらない。79分にカウンターから荒木隼人の縦パスで左を抜けて突き進むと、センタリング。ピエロス・ソティリウがプッシュするだけでいい最高のパスだった。これでスコアは4-1と、勝利をぐっと手繰り寄せる一発をアシストした。
「ピエロス選手はあそこに蹴ったら必ず走り込んでくれるんですよ。それは練習から分かっていましたし、だから正直、あんまり見てもいなかったというか、ボールを見て、あそこのスペースに流し込むことだけを意識しました」
このセンタリングは左足でバチンとたたくようにして、強いパワーをボールに加えて速度を与えた。その判断が吉と出た。
「弱かったら前のニアの選手に弾かれていたので、そのボールのスピードとスペースを意識しました。本当に満足したボールでした」
右足でゴール、左足でアシスト。パーフェクトに近い活躍だったのではないだろうか。
「いや、もう1点決められたんでね。それを左で決めていればパーフェクトだったかな」
決めたことも喜ぶけれど、それよりも外したことを悔やんで追い求める。その積み重ねでここまで戦ってきた。この勝利で首位のヴィッセル神戸に勝ち点1差に肉薄した。残りは1試合。ガンバ大阪とのアウェーゲームに勝って、天命を待つだけだ。
「いや、もう望みしかないと思います。神戸もちょっと勝ちがない状態だし、今日ここで僕たちが勝てたということは、次の試合にすごくポジティブです」
「すべてを出し切ります」と誓った今季ラストゲームも、加藤のゴールで勝利を。