川崎フロンターレがアルビレックス新潟を5-1で一蹴した一戦。9月27日の明治安田J1リーグ第32節で、河原創が高い存在感を見せた。先制ゴールに至るシーンでのボール奪取をはじめとして、今夏に移籍してきたばかりで、攻撃サッカーを司る中盤のコントロールタワーになっている。

上写真=鬼木達監督が河原創を評して「欠かせない存在」(写真◎J.LEAGUE)

■2024年9月27日 J1第32節(@U等々力/観衆20,142人)
川崎F 5-1 新潟
得点:(川)エリソン2、脇坂泰斗、山田新2
   (新)太田修介

12.381キロ

 鬼木達監督がこの夏に加わったばかりのボランチを表現するのに「エネルギー」という単語を使っていて、まさに言い得て妙なわけである。

「本当に特別な指示はしていなくて、持っているものをそのまま出してほしいと。つなぎの部分もそうですし、ボール奪取のところもですよね。運動量でいろいろカバーしてくれているし、本当に欠かせない存在になってきています。最後までエネルギーを切らさずできていて、攻撃の部分も自分らしさというか、前につけたりしていくところは継続してやっていってほしいです」

 そのエネルギーの発露の一つが、走行距離ということになるかもしれない。この日も両チームの出場した全選手で唯一、12キロ越えの12.381キロを走破した。それでも河原創本人は涼しい顔…というよりはあまり興味がないようだ。

「これが当たり前というわけではないですし、走行距離が出ているからいいってもんでもないし…。距離も出ていいプレーができるようになればいいんですけど」

 謙遜かもしれない、でも、鬼木監督がわざわざ「欠かせない存在」とお世辞を言うわけはない。実際に「いいプレー」をしていて、1点目のPKを獲得したシーンで大立ち回りを見せている。

 新潟の最終ラインから出てきた縦パスに反応し、受けた長倉幹樹がほんの少しだけボールをこぼした瞬間を見逃さずに体をねじ込んで奪い切った。そのまま前に出てカウンターを発動すると、中央をエリソンが走り、その左側にマルシーニョという2つのパスコースができた。届けたのは後者だ。マルシーニョがドリブルでゴールに向かったところでGKが小島亨介と接触して倒され、PKを手にした。

 一連のシーンを振り返った河原の自己分析はしかし、少し驚かされるものだった、

「あれはちょっと、特に狙ってやったわけではないですけど、ボールを受ける相手の位置だったり、ちょうどトラップ際にしっかり体をコンタクトできたのでマイボールにできました」

 狙ったわけではないのにあれだけきれいにかっさらったのか、というのが、一つの驚き。

「ボールを持ったときにエリソンとマルシーニョの2人が動き出していて、どっちを狙うか迷ったんですけど、 相手がエリソンの方にちょっと寄ったので、マルちゃんを選んだっていう感じです」

 音を文字にすると伝わりにくくなるが、言葉と言葉の間に長い間を置く朴訥とした語り口は、あのビッグプレーをやりきったすごみとはかけ離れている。マルシーニョを選んだ鮮やかな判断と、拍子抜けするほどの言葉のギャップが、続けての驚きだ。

 川崎Fはこの日、今季のベースの4-2-3-1システムではなく、エリソンと山田新を最前線に並べる4-4-2で臨んだ。中盤の中央には河原と山本悠樹。今季から川崎Fのメンバーになった2人だ。

「守備のときの横の距離感はポイントポイントでちょっと話はしましたけど………特には。試合前に特にこれっていう話はあんまりしてないんです」

 ボランチ2人が感覚の組み合わせだけで中盤を仕切って、5-1で圧勝するのも驚きだ。

 4-2-3-1から4-4-2という配置転換で、大きくポジションが変わったと言えば脇坂泰斗だろう。1トップの後ろ、中央からスタートして巧みにポジションを取るのがいつものやり方だが、右サイドハーフとなると守備での移動距離も長くなる。それを河原がさりげなくサポートした。

「自分の方はヤスくん(脇坂)が隣だったので、 ヤスくんがプレスをかけやすいように自分がちょっと早めに動くことで(脇坂を)動かすことは、ちょっと意識しながらはやってましたけど」

 どこまでも淡々と振り返る言葉を聞けば聞くほど、プレーのレベルの高さとのギャップに不思議な感覚に陥っていく、

「今日のゲームだけではなくて、ずっとみんながハードワークしてきた結果なんじゃないかなと思います」

 川崎Fにまた個性を存分に発揮する選手が加わっている。


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