上写真=鋭い飛び込みから決勝ゴールを決めた安斎颯馬(写真◎J.LEAGUE)
自分が先に入っちゃえば対処できない
試合は80分を過ぎ、0−0。FC東京は押してはいたものの、ゴールは遠かった。
そんな中で決勝点が生まれる。決めたのは安斎颯馬。右から左へ試合途中でポジションを変えたウイングが大仕事をやってのけた。
「自分自身、気持ちで押し込んだゴールだったと思います」
右サイドで松木玖生、ディエゴ・オリヴェイラ、仲川輝人が絡み、松木のパスを原川力がダイレクトで蹴り込んだ。ボールはファーサイドに飛び、そこへ安斎が飛び込んだ。田中宏武と争いながら、最後の場面で体を入れてグッと前に出た。
「原川選手がキックモーションに入った瞬間に、相手の一番危険なところに入ろうと思いましたし、マークがついてるのはわかったんですけど、自分が先に入っちゃえば、相手も対処できないので」
ボールの到達点に左足を伸ばし、しっかりボールをとらえてネット揺らした。シーズン前半、わずか1勝しかできていなかったホーム、味の素スタジアムのスタンドに歓喜をもたらした。
前節と順位は6位で変わらなかったものの、この1勝の価値は大きい。FC東京よりも上にいる5チームすべてが引き分けたため、その差が詰まったからだ。さらなる上位を狙える位置につける。
松木、俵積田晃太、荒木遼太郎ら今季は若い選手がチームを引っ張っているが、安斎もその一人。
「あの東京ダービーから今度はチームのために戦いたい、今度は自分がチームを勝たせるって思いを常に持っていました。時間はかかりましたけど、こうしたようやくひとつ、実ったは自分自身、大きいものがある」
4月13日に行われた東京Vとのダービーで、安斎は先発したものの、前半のうちに2枚のイエローカードをもらって退場した。2点のビハインドを背負っていた中でチームを数的不利に陥らせてしまった。その後、仲間の奮闘もあって試合はドローに終わったが、大きな責任を感じていた。
「ただ、まだまだこれからだと思うので、前線の選手としては数字も物足りない。もっともっと自分自身もそうですし、チームとしても結果を残せるように頑張りたい」
今年プロ契約を結んだ21歳は、そう言って活躍の継続を誓った。