J1第17節、浦和レッズはホームでヴィッセル神戸と対戦した。前半10分に先制を許すことになったが、後半から出場した中島翔哉が61分にゴールを挙げ、1−1で引き分けた。中島は得点のみならず、前への意識と優れた技術でチームに変化をもたらした。

上写真=神戸戦で印象的なプレーを披露した浦和の10番、中島翔哉(写真◎J.LEAGUE)

後半から登場しチームに変化をもたらす

 6月1日、埼玉スタジアムに4万5976人の観衆を集めてヴィッセル神戸と対戦した浦和レッズは、前半神戸の前からのプレスに苦しみ1点を失ってさらに失点してもおかしくない展開で何とか0-1で前半を終えた。

しかし、後半に入ると流れは一転してレッズが押し込み61分に同点に追い付くと、逆転するチャンスを生み出した。結局、ものにできずに1-1で試合を終えたが、後半は見事なプレーを見せて勝ち点1を得た。

 何がチームのプレーを劇的に変えたのか。ペア・マティアス・ヘグモ監督は後半頭からサミュエル・グスタフソン、中島翔哉の2人を投入。グスタフソンを岩尾憲に代えてアンカーの位置へ、中島は前田直輝に代わって入ったが、前田が務めていた右ウイングにはこの日初めて先発起用されていたオラ・ソルバッケンを左から回し、中島は左ウイングでプレーした。

 この交代策が展開を大きく変えたと言っていい。

 前半をフルパワーで戦った神戸の動きが落ちた面もあったかもしれないが、まずグスタフソンが中盤の低い位置でさばいて全体に落ち着きを与えたことが効果的だった。そして中島がボールを持つことで攻撃へのスイッチが入った。

 後半開始間もない49分に自陣でボールを受けた中島はドリブルでハーフラインを越えると、相手選手2人の間を通してバイタルエリアにいたチアゴ・サンタナへパス。さらにその1分後にも自陣でボールを受け相手に囲まれながらもキープして左回りにターンして前へ出た安居海渡に付けた。

 ともにビッグチャンスにつながったわけではないが、中島でなければ狭いスペースを通すパスや囲まれながらターンすることなく、後方に安全なパスを出す場面だったかもしれない。しかし、中島は常に前へを意識し、運ぶチャンスがあればそれを逃さない。そこには正確なパスを通すキックの技術とタイミングを逃さない感覚が必要で、中島はそれを備えている。ボールを持てば簡単に失わないキープ力もある。

 こうしたプレーでレッズの攻撃は前進し始め、良いリズムが生まれていった。52分には中島のパスから左サイドを上がった渡邊凌磨がクロスを送り、チアゴ・サンタナがヘッドでつないで安居が際どいシュートを放った。そして61分には同点ゴールを自ら決めた。右に開いて受けたソルバッケンが中へ入って刺しこんだパスをペナルティーエリア前で完璧なタッチで受けると右足で巻いてコントロールされたシュートを決めた。

 その後もボールを受けると彼ならではのアイディアを次々に出してレッズの攻撃を活性化した。簡単にボールを下げない、前へ進むチャンスを逃さないといった姿勢がチームに全体を動かしたのだ。

 中島は左ウイングを務めたが、ポジションにとらわれることなく、自由に中へ入ってプレーする。その動きもレッズの攻撃に変化をもたらしている。これは中島が今季初めてスタメンから起用された第9節のガンバ大阪戦から見られた傾向で、結果は圧倒的に押し込みながら0-1で敗れたが、以降の5試合で3連勝を含む4勝1敗とチームは上昇気流に乗った。前節のFC町田ゼルビア戦は軽度の負傷ながら中島が出場できなかった。このため、チームとして悪い内容ではなかったものの、攻撃の変化という点で物足りず2点目が奪えず接戦をものにできなかった。

 今季のレッズはシーズン序盤、ヘグモ監督が取り入れた4-3-3のシステムにとらわれすぎてプレーが硬直化するきらいがあった。だが、中島という「異分子」が入ることで活性化した。本人はそう言ったことを意識してプレーしているわけではなさそうで、神戸戦の後も前半の悪い流れをどう打開していこうとイメージしていたかと聞かれて「特にイメージはしていないが、その場のフィーリングでやっていました」と話していたように、彼ならではの感覚でプレーしている。良い意味でチーム戦術や他選手のプレーを意識しすぎない、我が道を行く天才肌だからこそ生まれる変化といえよう。

 ヘグモ監督も「個々の判断で自由にプレーすることは問題ない」としており、押し進める戦術が徐々に浸透している中で「異分子」中島の存在が効果的な変化をもたらしている。

取材・文◎国吉好弘


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