上写真=西川周作が史上3人目の600試合出場を達成、勝利で祝った(写真◎J.LEAGUE)
■2024年5月6日 J1リーグ第12節(@埼玉/観衆40,579人)
浦和 2-1 横浜FM
得点:(浦)伊藤敦樹2
(横)加藤聖
GKの魅力は「流れを変えることができる」
西川周作にとって、縁に恵まれた「600試合出場」になった。
デビューは大分トリニータの一員として戦った、2005年7月2日の横浜F・マリノス戦。600試合目も同じ相手になった。デビュー戦では0-2で敗れたが、この日は2-1で勝った。
600試合目が行われたのは2024年5月6日。ちょうど1年前のこの日、浦和はAFCチャンピオンズリーグで優勝した。
「確かに思い返したのは、自分がデビューしたときもマリノスが相手だったな、ということ。あと、ちょうど1年前、自分たちがACLを獲ったことですね。しかも天気も非常に似ていて風が強くて、その中でも勝ったいい思いがありました。今日、試合前にその優勝したときの映像を見て、何回見ても鳥肌が立つというか、またあの場所に戻ってACLを獲りたいなって。だから(5月11日と26日に決勝を控える)マリノスの選手には本当にACLを頑張ってねと、メッセージを伝えさせてもらいました」
長くやっていると、良縁に彩られる。
「今日の試合に特別な思い入れはそんなになくて、自分の通過点でもあるっていう意味では。でも、勝ってチームにベストなプレーをするというところは自分の大事にしてきたことでした」
これまでの599試合と同じその意識で臨んだ600試合目は、西川周作というゴールキーパーのありようを輝かしく示す90分になったのではないだろうか。ジョアン・ミレッ・コーチの教えでさらに進化したというポジティブなメンタル、軽快で安定感抜群のクロス対応、俊敏なシュートストップ、熱くて冷静な最後尾からの指示、そして攻撃の第一歩としての正確で受け手に優しいパス。
66分のチーム2点目は西川から始まっている。最後尾で回しながら、右サイドに開いてフリーになっている石原広教にダイレクトキックで届けたパスは、視野の広さと技術の高さで生み出す、この人の代名詞の一つである。石原は中のサミュエル・グスタフソンに預け、グスタフソンは縦に通し、受けた伊藤敦樹が持ち込んできれいに決めた。
「流れを変えることができる」と表現するGKの魅力を、節目のゲームでも存分に表現したわけだ。
「浦和のゴールを守り続けるというのは、本当にいい緊張感で、1試合も気の抜けたプレーはできません。その緊張感のおかげで自分も成長できている部分がある。皆さんの声とか見られているという意識で、試合中は力を与えてくれるマジックのような感じにかかるんです」
そうやって築いた大記録。672試合の遠藤保仁(ガンバ大阪ほか)、631試合の楢崎正剛(名古屋グランパスほか)という先人に続く、3人目の600試合出場である。
「僕の理想としては、できるだけ長くやりたいということ。それから自分の中で思い描いているのは、チームにとってたくさんの勝利をプレゼントすること。だから、目に見える結果はもう常に出し続けたい」
この日の勝利もその一つだ。1点は失ったが、189の無失点試合はすでに歴代ナンバーワンである。でも、西川にはもっと大事にしていることがある。
「引退するときに、記録よりも皆さんの頭の中にすごく記憶に残るようなプレーヤーでありたいということは思っています。皆さんの頭の中にどう残るかは分からないですけど、優勝したり、なんかちょっと特徴があるキーパーだなとか、何かしら皆さんの頭にいいイメージで残りたいと思います」
この時点ですでに、ファン・サポーターの頭の中には数え切れないほどの素敵な思い出が記憶されているけれど、もっともっと、たくさんの思い出を共有できるのは間違いなさそうだ。