上写真=藤尾翔太が高速アタックからきっちり決めて、町田を勝利に導いた(写真◎J.LEAGUE)
■2024年4月7日 J1リーグ第7節(@U等々力/観衆22,008人)
川崎F 0-1 町田
得点:(町) 藤尾翔太
「チームがオリンピックの出場権を獲得すること」
「そこはまだまだ課題なんで」
川崎フロンターレを沈める殊勲の決勝点は、藤尾翔太の右足から生まれた。32分、仙頭啓矢のきれいなワンタッチパスで左サイドを内側から抜けた藤本一輝が、こちらもワンタッチでセンタリング、川崎Fのセンターバック、高井幸大が伸ばした足の先を通ってボールが中央へとすり抜けると、走り込んでいた藤尾がプッシュした。速くて確実で迷いのない、町田の持ち味が凝縮された、鮮やかなゴールだ。
だが、藤尾が話したのは課題のこと。
「僕がゴールを決めて勝つのはすごいうれしいですけど、ほかにもチャンスもあって、チーム全体を通したら3点、4点を取れていました。そこはまだまだ課題なんで」
いまのチームの攻撃力からしたら、1点で終わってはいけない、というわけだ。
確かに、藤尾自身にもビッグチャンスがあった。特に開始早々の9分に、柴戸海が鋭い出足ではね返し、前に出たボールを引き取った藤尾がそのままGKチョン・ソンリョンと1対1になったシーンでは、左足のシュートはブロックされてしまった。
「もちろん、決められればいいですけど」と藤尾。「最初の方にチャンスがあると、また次にチャンスが来るな、って思えるんです」。つまり、仮に外したとしても、それは吉兆だというのだ。
だから、実際にゴールも決めたし、後半開始早々には、左からのクロスのクリアが小さくなったところで競り合いに勝って、ヘッドできっちりと押し込んでいる。追加点と思われたものの、オフサイドで取り消されて幻になったが、これも「全然焦らずに、がっかりもせずに、もう1点取ったらいいわぐらいの気持ちでした」。ポジティブマインドによって気持ちよくピッチで駆け回っている。
71分にはGK谷晃生が一発退場、一人少ない危機を迎えた。それでも黒田剛監督は最前線に藤尾を残して、守備に重心を置きながらもカウンターへの準備は怠らなかった。それだけではなく、藤尾も素早い戻りで相手の攻撃を止め、一人少ないことを感じさせなかった。
「10人になって1人少ないので、僕が戻らないとゴール前の枚数も少なくなる」
その意識が、ゴール前で体を張って、すぐさまカウンターの急先鋒にもなる獅子奮迅の動きを引き出した。
ここからは、パリ・オリンピックの予選となるU-23アジアカップに挑む。
「いまの僕の気持ちとしては、すごくいい状態なので、向こうに行っても結果を出したい。そして、僕が結果も出すのも大事ですけど、やっぱりチームがオリンピックの出場権を獲得することが大事なので、注視してやっていきたい」
絶好調のままアジアの戦いに勇んで飛び出していく。