開幕戦、アウェーでサンフレッチェ広島に0-2で敗れた浦和レッズは3日、ホームでの第2節、埼玉スタジアムに5万人を超える観客を集めた試合でも東京ヴェルディに先制を許した。終盤にPKを得て1-1で引き分け、連敗は免れたものの苦しいスタートを切ることになった。だが、その戦いぶりは大いに可能性を感じさせるものだった。

上写真=今季から浦和の指揮をとるヘグモ監督(写真◎Getty Images)

4−3−3で攻撃的にプレーすると指揮官

 浦和レッズは今季、ノルウェー代表の監督も務め、昨季まで率いていたスウェーデンのヘッケンではリーグ制覇も成し遂げるなど実績、経験とも十分なペア・マティアス・ヘグモ監督を迎えた。その指揮下で重要な役割を担ってきたスウェーデン代表のMFサミュエル・グスタフソンや一昨季のJ1得点王だったFWチアゴ・サンタナなど大型補強を実施。昨季リーグ最少失点を誇ったディフェンス陣は健在で、机上の戦力分析では優勝候補筆頭との声もあがっていた。

 しかし、広島戦に続いて東京V戦でも新チームの強みを示すには至らなかった。

「4‐3‐3で攻撃的にプレーする」と公言した新指揮官は、実際に開幕戦から2試合にこのシステムで臨み、同じスターティングメンバーを送り出した。両ウイングをワイドの高い位置でプレーさせ、ここを起点に攻撃を仕掛けていく狙いだが、中盤からのつながりが悪く、右の関根貴大、左の松尾佑介に良い形で仕掛けられるボールがほとんど入らない。

 中盤のアンカーを務めるグスタフソンはボールキープのうまさ、視野の広さを感じさせるものの、周囲との連係がスムーズとは言えず、効果的なパスを供給できなかった。特にインサイドハーフの伊藤敦樹、小泉佳穂との連係は東京Vのプレスが厳しかったこともあり、寸断されるシーンが目立った。

 ヘグモ監督は「前半はかなりいい形でゲームをコントロールできていたと思います。しかし、インサイドハーフの裏抜けという重要なプレーが少し欠けていた。また、ウイングも背後に抜けて相手の脅威になるという場面が少なかったので、相手にとって少し守りやすいプレーになってしまった」と振り返り、攻撃陣の動きに積極性、アイディアとも欠けていたことを認めた。

 さらに「後半は裏抜けのプレーも増やしましたし、守備のところは4-4-2で追い込む形を取りました。そしてボールを握ることはできたと思いますが、もっと決定機をつくらないといけない」と話したように、後半の修正も十分ではなかった。

 ただし、この日は皮肉にも後半途中に左サイドバックに大畑歩夢、中盤に岩尾憲、中島翔哉、トップに興梠慎三を投入して戦い方を変えてから、登場した選手たちがそれぞれの持ち味を発揮して流れを変え、大畑の攻撃参加からPKを獲得して同点につなげた。

 ベテランの興梠は前線でボールを引き出して収めてリズムを作り、大畑は左サイドバックが本職の効果的なプレーで攻撃を活性化した。戦い方のオプションと監督の采配の手腕を示せたことはこの試合での収穫だったが、もちろんベースとなる本来の戦い方が確立されなければ、優勝、上位を目指す戦いはできないだろう。

 とはいえ、まだ2試合を終えたにすぎない。そもそも新監督の下、新しい戦術でプレーしてすぐに結果を出すのは簡単ではないだろう。昨季もマティアス・スコルジャ監督が就任して2連敗でスタートしながら、その後に立て直して優勝争いに加わっている。

 本当の評価はこれからになるが、戦術の要となるグスタフソンは広島戦よりプレーの質が上がっており、武器となる両ウイングには広島戦で好調なプレーを見せながらこの日は発熱で欠場した前田直輝、期待の大型ドリブラー、オラ・ソルバッケンや大久保智明もおり、次節にはプレーできそうだ。自然、攻撃のバリエーションも増えるはず。ポジティブな要素は少なくない。

「我々がやろうとしていることに選手たちがより順応し、さらにインサイドハーフとウイングの関係性を深めていけば、良くなっていくと思います」という指揮官の言葉は強がりではないだろう。インサイドハーフのプレーがさらに整理されて、積極的にプレー出来れば、問題は解決するのではないか。タイプは異なるが、伊藤、小泉ともインサイドハーフとしての資質は備えている。

 苦しいスタートを切ったことは確かだが、結果だけにとらわれず、大局から見れば、目指すべき場所に進む可能性は十分と見る。

取材◎国吉好弘


This article is a sponsored article by
''.