明治安田生命J1リーグ第33節が25日に行われ、ノエビアスタジアム神戸では首位のヴィッセル神戸と5位の名古屋グランパスが対戦。勝てば優勝が決まる神戸は試合開始から硬さを見せることなく、はつらつとプレー。前半のうちに2点のリードを奪うと、名古屋の猛攻を1点に抑えて勝利を飾り、J1初優勝を飾った。

上写真=悲願のJ1初優勝を決めたヴィッセル神戸の選手たち(写真◎毛受亮介)

■2023年11月25日 J1第33節(@ノエスタ/観衆25,365人)
神戸 2−1 名古屋
得点:(神)井出遥也、武藤嘉紀
   (名)キャスパー・ユンカー

2位横浜FMに勝ち点4差をつけ、シャーレを掲げる!

 勝てば、初優勝。重圧がかかるシチュエーション。だが序盤は神戸の選手たちに硬さはなかった。今シーズン、チームの基盤になってきた球際の強さと前向きの守備、素早い切り替えからゴールを目指す。ボールホルダーへのサポート意識も高いため、後方からどんどん人が飛び出し、躍動した。

 12分、神戸が早速ゴールを奪う。敵陣左サイドのスローインの流れから相手のクリアボールを拾って扇原、酒井とつなぎ、大迫が密集を通すスルーパスを送ると裏に抜け出した井出が右足でゴールを射抜いた。

 その2分後、再び大迫のアシストからネットが揺れる。佐々木のサイドチェンジのパスを左に流れて受けた大迫が左足で低く鋭いクロスを送ると、武藤が飛び込み、リードを広げることに成功した。

 15分と経たぬうちに2−0とした神戸だったが、30分に思わぬ形から失点してしまう。名古屋が選手交代とポジションチェンジでバランスを『整備』した後だった。

 左ウイングバックから右サイドに回った森下が躍動し始め、神戸ゴールに迫る回数を増やしていた時間帯だった。神戸のGK前川のロングボールを名古屋のCBが藤井が頭で跳ね返すと、そのボールがそのまま名古屋最終ラインの間を割って入ったユンカーの元へ届く。トゥーレルの寄せをブロックしつつ、ユンカーがそのまま左足でプッシュ。名古屋が1点を返した。

 神戸の1点リードで迎えた後半、互いに攻め合い、決定機も迎えるが次の1点はなかなか生まれなかった。神戸は決定的な3点目を狙い、名古屋は同点ゴールを求める中で時計の針は進む。

 終盤には名古屋が猛攻を仕掛けたが、58分から途中出場し、1ヶ月ぶりにピッチに戻ってきた山口キャプテンも含め神戸は集中した守備で対応。シーズンを通してチームのベースとなったハードワークを最後までピッチで示した。そして5分のアディショナルタイムが終わり、試合終了の笛が鳴った。

 神戸が、悲願のJ1初優勝。シーズン開始から『戦うこと』にこだわり、ハイインテンシティでプレーし続けて、ついにシャーレを掲げた。

「選手、スタッフ、ヴィッセルに関わるすべての人の力で優勝できたと思います。選手は最後の笛が鳴るまで戦い続けてくれて誇りに思います」

 吉田孝行監督はそう言って選手を称えた。自身も現役時代にプレーしたクラブで優勝を成し遂げたことも「とてもうれしい、ただそれに尽きる」という。

 今回が3度目の就任で、いずれもシーズン途中からだったが、「自分自身、監督として成長した」と指揮官は語る。「昨年、どうやって勝てばいいか、わかった。(昨季)自分が就任して3連勝はしたんですけど、その後、勝てない時期があった。自分たちはもっと前からプレッシングしようと。選手も同じ意見で、終盤戦の5連勝につながった。それを今シーズンに、キャンプから取り組んでつなげた」と、昨季終盤につかんだ手応えを、チームにとって確かなものとし、今季の躍進を導いた。

 勝つことにフォーカスし、その過程ではアンタッチャブルとも思われていたアンドレス・イニエスタをスタメンから外した。重用したのは、強度の高い、走れる選手たち。指揮官がそのスタンスを明確に打ち出したことが、今回の結果につながったことは間違いない。

 ケガ人も続出したが、チーム一丸となって乗り越えた。イニエスタの退団などある意味で痛みも伴ったが、開幕戦から優勝を決めた名古屋戦まで、指揮官のスタンスは変わらなかった。ブレずに、真っ直ぐに走り抜けるチームは強い。

 創設29年目。ヴィッセル神戸が新たな歴史を築き、Jで11番目となる王者が誕生した。

▼出場メンバー
・神戸◎GK前川黛也、DF初瀬亮(81分:飯野七聖)、山川哲史、マテウス・トゥーレル、本多勇喜、MF酒井高徳、扇原貴宏、佐々木大樹(51分:パトリッキ)、井出遥也(58分:山口蛍)、武藤嘉紀、FW大迫勇也

・名古屋◎GKランゲラック、DF野上結貴、中谷進之介、藤井陽也、MF久保藤次郎(23分:森嶋司)、稲垣祥(66分:山田陸)、米本拓司(66分:前田直輝)、森下龍矢、和泉竜司、永井謙佑(80分:中島大嘉)、FWキャスパー・ユンカー


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