上写真＝井出遥也（右から2人目）、佐々木大樹（左端）の活躍で神戸が勝って首位を走る（写真◎J.LEAGUE）
■2023年10月21日 J1リーグ第30節（＠国立競技場/観衆53,444人）
神戸 3-1 鹿島
得点：（神）佐々木大樹2、井出遥也
（鹿）松村優太
鹿島は優勝の可能性が消滅
30分のことだった。鹿島アントラーズの佐野海舟がボールを足元に置いて前を向き、ボールを配る先を探していた。そこへ背後から猛然と迫ったのが、ヴィッセル神戸の武藤嘉紀。次の瞬間、ボールは神戸のものになった。
強く、早く、巧い。神戸は首位に立つだけの自信と総合力をいかんなく発揮した。
先制ゴールは16分。左サイドで井出遥也がドリブルを仕掛け、2度の切り返しで縦に抜けてクロス、佐々木大樹が下がりながらのヘッドで巧みにゴール右に送り込んだ。45分にも左を崩す。山口蛍のサイドチェンジに武藤が追いつくと、右足のアウトサイドで意表を突くクロス、これを井手がヘッドでたたくとGK早川友基の右手をはじいてゴールに転がり込んだ。
冒頭の30分のシーンのほかにも、例えば大迫勇也が迫力満点のプレスバックを何度も繰り返し、鹿島の攻撃のスタートを阻止した。サイドに長いボールが出てきても、酒井高徳や本多勇喜がスピードで負けずに危険な場所にボールを入れさせない。
これだけナイーブな鹿島も珍しいのではないだろうか。岩政大樹監督は後半開始から3人を交代させ、昌子源、仲間隼斗、松村優太を投入して逆襲を狙った。しかし、神戸を困らせることができない。
神戸は試合の進め方も絶妙で、迫りくる鹿島の勢いを落ち着いて受け流しながら、ピッチを大きく使って前に運んでは、相手陣内でボールを動かした。
そして、83分にはダメ押し。扇原貴宏の右CKをニアでジェアン・パトリッキがヘッド、左ポストに当たってこぼれたボールを佐々木がダイレクトでゴールに蹴り込んで、リードを3点に広げた。
鹿島は90＋1分に、右から中に運んだ松村がペナルティーエリアの外から左足でミドルシュートをたたき込んで一矢報いるが、これが精一杯。3-1で神戸が勝利を収めた一方で、鹿島は優勝の可能性がついえて明暗がくっきりと分かれた。
岩政大樹監督は優勝を逃したことについて「申し訳なく思っています」とした上で、この90分は「力負け」と認めた。
「うまくいかなかったのは力負けで、神戸がたくましく強かった。完全に上回られました」
3連勝の神戸は勝ち点を61に伸ばした。吉田孝行監督は「勝利にふさわしい内容」と振り返るものの淡々としていて、「（勝ち点は）意識していない」と冷静だ。
「今日もマリノスさんも勝ちましたし（札幌に4-1）、この状況は続きます。ほかのチームがどうとかではなくて、自分たちが自分たちらしさを出して1試合1試合戦うこと、それを続けるのが確率的には近いと思います」
神戸のVロードは、残り4試合。立ちはだかるのは、湘南ベルマーレ、浦和レッズ、名古屋グランパス、そしてガンバ大阪だ。
