上写真=瀬古樹がJ1通算100試合出場の記念マッチで勝利に貢献した(写真◎J.LEAGUE)
■2023年9月15日 明治安田生命J1リーグ第27節(@等々力/観衆20,284人)
川崎F 1-0 FC東京
得点:(川)マルシーニョ
「監督の皆さんがどんどん僕を使ってくれた」
横浜FCで2020年に33試合、21年も33試合、川崎フロンターレに移って22年に13試合で、この日のFC東京戦が今年の21試合目。瀬古樹がJ1通算100試合出場を達成した。
そして、節目の一戦は1-0の勝利だ。
「100試合という節目に勝てたのはすごく良かったことです。これまで3人の監督の皆さん(横浜FCで下平隆宏監督と早川知伸監督、川崎Fで鬼木達監督)がどんどん僕を使ってくれたのがこういう結果になってると思うので、すごく感謝しています」
記念の試合に、恩師へのお礼を示した。
3人目となる鬼木監督の下では、川崎Fのスタイルを体になじませるのに少し時間が必要だった。だが、今年はそのダイナミックなスタイルがマッチして、16試合に先発出場している。
「僕個人としてもミスもあまりなかったと思ってますし、成功体験をこうやってどんどん増やしていきながら、自分の中で何が一番いいのかを、自分の体にフィットさせていきたいなと思っています」
FC東京に1-0で競り勝った一戦は、そんなインプレッション。ミスがない、という言葉に、安定感をもたらした自我がほとばしる。
この日はアンカーに橘田健人が入り、インサイドハーフは右に脇坂泰斗、左に瀬古という配置だった。ほかにアンカーにはジョアン・シミッチがいるし、インサイドハーフにはこの日も遠野大弥が瀬古に代わって入っている。競争は激しいが、さまざまな組み合わせがこのチームの魅力でもある。
「今回は僕と泰斗くん、健人が出てましたけど、ジョアンが出るときもありますし、そのときに出るユニットで話をして、それぞれの特徴もありながら、チームとしてやるべきこともあって、しっかりバランスを取りながらできているのかなと思います」
この3人で言えば、プレーエリアを広げながら攻撃にも守備にも対応できるのが、大きなメリットだろう。だから、鬼木達監督は少し守備のメカニズムに手を加えて機能させたのだ。
ピッチでの実感は、橘田が説明する。
「サイドで守るときには、逆サイドに持っていかれないようにすることはチームとしてはっきりしてるので、狙いやすい部分はあると思います」
片方のサイドに追い込んで圧縮して奪い切る。そのために、ウイングが内側に絞ってサイドに追い込んでから、インサイドハーフが思い切って外のスペースへつぶしに出る方法を組み込んだ。橘田が続ける。
「中盤の3人が広いスペースを守ることになったので、誰か出て行ったときに誰かがカバーするのは、練習から常に意識しながらやっていました。そこはいい距離感でできたんじゃないかなと思います。広いスペースであってもこの3人ならそこは守れるので、運動しながら、うまく守れました」
そもそも豊富な運動量で大きなエリアを抑え込むことのできる橘田に、推進力を生かして体を投げ出すことを厭わない瀬古、そして強度を一気に増して覚醒した脇坂と、強さも速さも幅広さも兼ね備えたトリオなのだ。このスタイルに最も適した個性を持っている。
「そもそも戦うところがベースだと思いますし、球際やプレッシャーの速さはありました」
瀬古はそうやって、当然だとばかりに控えめに振り返った。交代で入ったレアンドロ・ダミアンも遠野も宮代大聖も瀬川祐輔も、最後の最後まで相手の足元に飛び込む集中力は途切れなかった。
「今日に関しては僕とか泰斗が外を踏むことが多かったと思うんですけど、そのスピード感であったり迫力というのは意識してやっていたこと。それはゲームを締める意味でも良かったかなと思います」
瀬古はもちろん、そこからさらにたたみかけてゴールを奪うべきだったという反省も続けて口にしている。それでも、バフェティンビ・ゴミスを組み入れつつ新しいスタイルで勝利を収めたチームの「体幹」ともいえる部分の強さに、瀬古、脇坂、橘田の貢献があったことは間違いないだろう。