9月19日からAFCチャンピオンズリーグ(ACL)東地区のグループステージが始まる。アジアの戦いに挑む川崎フロンターレから、脇坂泰斗にフォーカスする3週連続インタビュー企画の第2回をお届けする。今回は、代名詞でもある「ターン」の秘密と、それを実現するために必要な「見る」ことの真髄を言葉にする。

上写真=好調を続ける脇坂泰斗が代名詞であるターンの技術を言葉にする(写真◎J LEAGUE)

(連続インタビュー第1回はこちら

見る、それから触る

――脇坂泰斗選手といえば「ターン」。次はこの必殺技についてうかがいます。相手を欺いて、ボールが来た方向とは逆に運ぶこと、あるいはそれをもフェイクに使って、またボールが来た方向、あるいはゴールへと向かっていく、という切れ味鋭いプレーです。うまくなりたい子どもたちのためにも、そのメカニズムを言語化してもらえませんか。

脇坂泰斗 まず、ポジショニングが第一ですね。立ち位置で勝負がついていると、相手は無理やり奪いに来たり、あるいは抜かれたくない方向を守ってくるわけです。そこで違う方向に進んでいけば、相手の矢印は「ゼロ」になる。つまり、立ち位置で先手を取っていれば、僕の中ではもう相手がどう来ても対応できるということです。

――そうなると、ターンの極意は、技術の前にまず判断、ということですね。

脇坂 そうですね。逆にそこで相手が取りに来なかったら、前を向いてパスを出せばいいわけですから。だから、立ち位置で勝ってしまえばもう、相手を見ておけばいいという状態になるんです。もちろん、相手もやられたくないので、タイトについてきたりゴール方向を守ったりしてきます。だから、ぎりぎりまで相手を見ておくという作業が必要ですよね。技術と同じぐらいに大事です。

 ぎりぎりまで見ておけば、ボールに触る場所やタイミングを変えることができます。前で触ろうとしていても、相手が足を出していなければボールを引いて懐を作ってからターンしたり、逆に自分が引こうとしたところにカットしようとして寄ってきたら、体を入れて逆足でターンしたりします。

 例えば、右側に敵がいて左側からパスが来たシーンがあるとします。最初は右足でコントロールしようとしたけれど、そのコースに入られそうだなと思ったら、右足で相手をブロックしながら左足でボールを送り出して反時計回りにターンできます。それも、相手を見ていないとできないですからね。だから、相手を見ることが先で、その次にボールに触る技術、というイメージなんです。

言葉の先の感覚

――立ち位置がすべてというお話がありましたが、どういうポジショニングがご自身にとってベストでしょうか。どの相手にも触られない距離、とはよく言われることですが。

脇坂 ベストはやっぱり、いかに相手が守りたいと思うほうと逆をいくか、ですね。例えば、インサイドハーフのときには右側に位置してることが多いんですけど、相手は中に行かせたくないので、外へ外へと追い出そうとしてきます。それに対してどうすれば立ち位置で逆を取れるか、相手の狙いの逆をいくかをまず考えます。そして、ボールホルダーと相手の状況を見て考えながらポジションを取る、という感じでしょうか。

――なかなか明かしたくない部分でもあるでしょうけれど。

脇坂 そうですね、企業秘密みたいなところもあるんで(笑)。とは言っても、僕の中で培ってきた瞬時の判断も大事にしていますから。

――それは、表現が正しいか分かりませんが、勘のようなもの?

脇坂 そうですね。感覚というのも大事になってくると思っています。ただ、言語化できるようなものを持っていないと、そういう感覚の領域にたどり着かないのも確かです。言葉にできることをやり続けていくことで、自分の中で経験が蓄積されていって、サッカーにまったく同じシーンはないけれども、似たような状況で対応できるようになります。

――「プレーの言葉」が積み上がるからこそ、「感覚」が研ぎ澄まされるというわけですね。確かに、言葉で表現できるプレーだけでは、「その先」にいけない気がします。

脇坂 ここに至るまでに、何回も失敗してきました。何回も食われたり(ボールを奪われたり)もしました。そうやって自分の中で培ってきたものから瞬時瞬時で判断している、という感じです。

 もちろん、ボールを取られないことを優先するときもあって、ターンしたいところでも、チーム状況を考えて落ち着けたほうがいいタイミングや、パスを散らして時間を作ったほうがいいときもある。それ次第で立ち位置も変わればターンの仕方も変わります。それも感覚によるものです。

――正しい立ち位置を取ったら、次に相手を見るという流れを説明してくれましたが、具体的にどこを見ているのでしょうか。

脇坂 まず、僕の中では、相手を直接視野には入れないようにしています。ボールは急に跳ねたり、止めたときにずれたりするので、直接見ることが大事になります。だから、相手は間接視野で確認します。もちろん、明らかにパスがゆっくりで相手も取りに来ないときには、ボールを間接視野で確認して、直接視野では遠くを見ておくこともありますけどね。

――そういう、目線の使い分けや駆け引きのようなものも大事ですね。

脇坂 そうなんですよ。僕も目線をフェイントに使いますし、声や体の向きもそう。それで相手が一瞬でも止まれば、その間に相手を間接視野で確認しておいてターンができますから。

間接視野と直接視野

――そんな気持ちのいいターンからゴールが生まれたのは、J1第22節のガンバ大阪戦でした。27分にペナルティーエリアの中にうまく潜り込むと、登里享平選手の左からのループパスをゴールを背にして受けてからきれいにターンして前を向き、右足で冷静にゴール右へと送り込みました。美しかった!

脇坂 ちょうど真ん中あたりから左斜め前に走っていったシーンですね。左サイドでケント(橘田健人)とアキさん(家長昭博)、ノボリくん(登里)で三角形を作っていました。相手の3バックの右の三浦弦太選手がケントについていって、さらにはボランチのネタ・ラヴィ選手もそのエリアに寄っていった。それで空いた背後に入っていきました。

 三浦選手もネタ・ラヴィ選手も、ノボリくんがワンタッチで浮き球のパスを送るとは思っていなかったでしょうね。一瞬の間ができましたから。

 ボールが浮いている間に、自分がフリーになっていることと、(レアンドロ)ダミアンがゴール前にいることを確認しました。ダミアンのマークについていた福岡将太選手はダミアンを捨てて僕のところに出ていくわけにはいかなかったでしょうから、そこでターンしてシュートというイメージができて、パスが素晴らしかったこともあってトラップもうまく決まりました。

 ただ、東口順昭選手もすごくいいキーパーじゃないですか。だから、打つということが分かってしまっては止められると思ったので、福岡選手の股を狙いながら、トラップしてからすぐに打ったんです。

――その一連の流れでも、相手の位置は間接視野でとらえていたんですね。

脇坂 いや、実はあのシーンでは先に首を振って直接視野で見ていますね。ハイボールを待つときってちょっと緊張するんですけど、でもボールが浮いてきているということは、グラウンドコンディションの影響も受けないし、風があったわけでもなければ、変な回転もかかっていなかったので、コースが変わらないまま届くのは確実なんですよ。だから、ボールのほうを間接視野で見て、そこでできる時間を使って周りを直接視野で見ることができたんです。それで、ゴールの方向にターンできると判断しました。

――その使い分けはもう、無意識にできてしまうんですね。

脇坂 目のトレーニングもしてますからね。間接視野を意識して生活しているんです。こうやっていま、インタビューを受けているときにも、いろいろなものが見えているじゃないですか。例えばいま、向こうに人が通りました。そういう起こったことを頭の中で言ったりするんです。よくやるのが、 練習中にピッチ上でパス交換しているときに、その周辺でジョギングしてる人の名前を言うこと。それが正解だったかそうじゃなかったかを確認してみたりします。

――それはプロ入り前から続けてきているのですか。

脇坂 プロに入ってからはビジョントレーニングのコーチが来てくれたこともありますが、大学生のときに間接視野の大切さを認識しましたし、バルセロナ時代のシャビや(アンドレス)イニエスタが間接視野を利用してどう認知しているかを分析するテレビ番組を見たりして、自分でも取り入れていました。

 シャビは特別で、ピッチを上から見たようなイメージが浮かんでいると話していました。たぶん、ケンゴさん(中村憲剛)も同じだと思いますけど、僕はそういうタイプではない。だから、間接視野でいかにたくさん見るかを大事にしています。見えているものが増えれば、パス一本で相手を動かせていける感覚もつかめますから。

(連続インタビュー第3回につづく


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