上写真=ダワンは走り続けて体力の限界ぎりぎりでも、集中して決めた(写真◎J.LEAGUE)
■2023年8月6日 明治安田生命J1リーグ第22節(@等々力/観衆20,162人)
川崎F 3-4 G大阪
得点:(川)脇坂泰斗、瀬川祐輔2
(G)石毛秀樹、イッサム・ジェバリ、ファン・アラーノ、ダワン
15センチの差を超えるために
ガンバ大阪が前半で3-1として折り返しながら、後半にトーンダウン、川崎フロンターレに2点を追いつかれて3-3に持ち込まれた。そんな出入りの激しい試合はそのまま、アディショナルタイムに入っていった。
でも、そこで終わりにはしなかった。食野亮太郎がパワフルに狙ったミドルシュートが、相手の伸ばした足をかすめてゴールラインを割った。左CKのビッグチャンス。
主役はダワンだ。
90+6分、山本悠樹がニアに蹴り込むと、ダワンは一瞬でマークの前に出てヘッドでボールをとらえ、うまく角度をつけてゴール右に送り届けた。4-3!
まるでスローモーションのように、あるいは、まさしくゴールに吸い込まれるように、という表現をそのまま描いたような、歓喜の一発だった。
よく走り、よく戦う優等生。コメントもまっすぐだ。
「(山本)悠樹が練習通りのいいボールを蹴ってくれました」とまずは味方を称えれば、「ゴールはうれしかったけれど、自分のゴールが最終的にチームの勝利につながって、ガンバのサポートになったこと、チームメートのサポートになったことが本当にうれしいのです」と仲間の役に立つことの喜びをストレートに明かす。
走行距離11.108kmはもちろん、この試合に出場したすべての選手の中でナンバーワンだ。「神様がこういう状況を用意してくれたことに感謝したい」と決勝点を喜んだが、走って走って走り抜いたことへのご褒美なのかもしれない。公式記録で気温29.2度、湿度69パーセントの酷暑の中で動き続け、「正直、もう限界に近い状態だった」と苦しさを隠さなかったほどなのだ。
その決勝ゴールのシーンでは、川崎Fの高井幸大がマークについてきた。身長192センチ、急成長中の若手DFのマークを、どうやってかいくぐったのか。
「彼がすごく身長が高いのは分かっていて、(三浦)弦太と(福岡)将太と(鈴木)武蔵とスタートのポジションを一緒にして、固まったところから走り出そうと話をしていました。それに、弦太の後ろで僕がちょっとしゃがんで姿を隠したので、最初の出足のところで彼の視線の外から動き出したんです。それで、相手は少し遅れたんじゃないかな」
177センチのダワンが15センチもの差を超越して放ったヘディングシュート。その秘密は「かくれんぼ」にあったというのだ。
そんな「解説」を終えると、ダワンはニカッと笑った。