上写真=鈴木優磨が同点弾に続き、残り2つのゴールにも絡む活躍ぶり(写真◎J.LEAGUE)
■2023年7月16日 明治安田生命J1リーグ第21節(@味スタ/観衆37,014人)
FC東京 1-3 鹿島
得点:(F)ディエゴ・オリベイラ
(鹿)鈴木優磨、垣田裕暉、ディエゴ・ピトゥカ
「みんなで点を取れればもちろんいいですよ。でも…」
「見ての通り、すごい男だと思います」
岩政大樹監督も絶賛を惜しまない。鈴木優磨のことだ。
FC東京に9分に先制ゴールを許したものの、鈴木が鹿島を救う。23分に樋口雄太の左からのCKにファーでジャンプ、ヘッドでたたくと、勢いを得たボールはバーをかすめてゴールに飛び込んだ。豪快な同点弾だ。
45分には自ら左の安西幸輝に展開したあと、そのセンタリングをファーに回って受けて、こぼれたところを樋口がボレーシュート、垣田裕暉がヘッドで押し込んで逆転に成功する。54分には中盤で松木玖生から奪った仲間隼斗から左で受け、キープして時間を作ってから、さらに外側を走った安西へパス、マイナスの折り返しに仲間がシュート、GKヤクブ・スウォビィクにブロックされたが、こぼれ球をディエゴ・ピトゥカが強烈に突き刺した。3つのゴールすべてに絡んだのだから、岩政監督の最敬礼にもうなずける。
では、鈴木は鈴木自身をどう思うのか。
「もっとエゴイストになりたい」
まだ足りない、というわけだ。
「自分のパフォーマンスに集中して、自分が点を取れるようになれば」
勝利は自らのゴールでもぎ取るものだと確信している。
「オレがスペースを空けたときに違う選手が入ってきて、みんなで点を取れればもちろんいいですよ。でも、そればっかり意識してたら、自分のいいところはあまり出ないと思っているので、もっとエゴイストになりたい」
チームメートに迷惑をかけるわがままとしてのエゴ、ではなく、チームが勝利を手にするために自分自身のすべきこと=ゴールに集中するための自我。
チームの調子が上がらないときは、まろやかに表現するならば、オールラウンドにプレーしてきた。ただ実際には、守備でもビルドアップでもフィニッシュワークでも、鈴木がすべてに関わり続けなければ成り立たないようなカオスなチーム状況にあった。それが改善されつつある。
さらに整理して研ぎ澄ませることが、本当の意味でチームのためになる、という役割をようやく得たことそれ自体が、鹿島が少しずつ進化していることの証だと言えるだろう。
「戦術を見られがちですけど、今日の試合を見てくれれば分かるように、お客さんは心が震えるようなシーン、戦う気持ちや魂が乗ってる部分を見に来てくれているんです。戦術ももちろん大事だけれど、そこにプラスしてやっぱり戦う気持ちで代表してピッチに立っているので、パフォーマンスが今日はよかったんじゃないかなと思います」
これで6位に浮上した。首位のヴィッセル神戸とは勝ち点10の差がある。
「成長を掲げてるシーズンなので、 早く全員で成長して、アントラーズはやっぱ優勝しなきゃ」
鈴木にとって成長とは、やはり「自分がゴールを取ること」である。