1ゴール、1アシストの活躍で逆転勝利の立役者となった浦和レッズの伊藤敦樹。5月31日のサンフレッチェ広島戦で見せたパフォーマンスは圧巻だった。埼玉スタジアムに視察に訪れた日本代表の森保一監督にも少なからずインパクトを与えたようだ。

上写真=勝利の立役者となった伊藤敦樹。カメラマンのリクエストに応えてガッツポーズ(写真◎J .LEAGUE)

チームとしての強さを見せることができた

 今季、リーグ戦4度目の逆転勝利に導き、埼玉スタジアムを大きく沸かせた浦和の伊藤は試合後、興奮冷めやらぬ口調で喜びを口にした。

「広島が強いのは分かっていましたけど、リーグ優勝するためには勝つしかなかった。今季の浦和はたとえ先に失点しても、逆転して勝つことが多いです。きょうもチームとしての強さを見せることができたと思います」

 目を引いたのは、中盤から前線へダイナミックに飛び出していく機動力。運動量が自慢のボランチはゲーム終盤に差し掛かると、ぐっとギアを上げた。1点を追いかける72分、ペナルティーエリア近辺に顔を出し、酒井宏樹の同点ゴールを演出。本人も納得のアシストだった。

「良い形でゴール前に入っていけました。(大久保智明から)ボールを受ける前に、宏樹くんが走り出すのも見えていたので、良いタイミングでパスを出せました」

 後半アディショナルタイムになっても、足は止まらなかった。右サイドの酒井からクロスボールが上がると、迷わずペナルティーエリア内に侵入。最後はブライアン・リンセンから折り返されたボールを左足でコンパクトに振り抜き、劇的な決勝ゴールをマークした(浦和2―1広島)。

「ブライアンと目が合ったので、落としてくれると信じていました。最後は気持ちで押し込みました」

 満面の笑みを浮かべる表情には、充実感がにじんでいた。

視察のために会場に足を運んでいた森保一監督も24歳の働きぶりに目を細めていた。試合後、報道陣の前で伊藤について聞かれると、思わず口元を緩めた。

「(今後、招集の)チャンスはあると思っています」

 6月シリーズの日本代表には選ばれなかったものの、そう遠くない場所にいることを窺わせた。今季はすでに2ゴールをマーク。通算3度目の優勝を果たしたACLでは攻守両面で強度の高いプレーを見せ、国際舞台で戦えることも証明した。185センチの大型ボランチは、意欲にあふれている。

「日本代表は常に目指している場所。今回はメンバーに選ばれなかったですが、浦和で結果を出し続けていれば、きっとチャンスは来ると思っています」

 浦和の新しい象徴になりつつある下部組織出身の生え抜きは、ここからさらに大きくなっていくつもりだ。

取材◎杉園昌之


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