上写真=サポーターの声援に応える鈴木優磨(写真◎J .LEAGUE)
どの試合にも同じモチベーションで臨むのがアントラーズ
鈴木優磨がCKから最初に決めた12分のヘディングによるゴールは、ファウルと判定されて取り消されることになった。右コーナーから樋口雄太がボールを蹴る直前、ボックス内のポジション争いの中で名古屋のMF稲垣祥をブロックしたのが、その理由。オンフィールドレビューを経て、鹿島のキャプテンが刻んだゴールは幻になった。
「ブロックというのはサッカーやっている選手からすれば当たり前なんで、あれがファウルを取られたら難しいなというのは、個人的な意見ですけど、それでもチームが流れを切らさず、続けて同じような形で点を取れたので」
鈴木が振り返った通り、その後、チームはメンタル面で乱れることなくプレーを続けた。そして29分、同じように右CKからゴールを生み出してみせる。樋口が蹴ったボールをファーサイドで待っていた鈴木が頭でとらえ、同じようにネットを揺らしたのだ。
「スカウティングで名古屋のセットプレーというのは非常に強いと思っていたので、その中でも昨日、植田(直通)くんとか(関川)郁万と話していて、前は非常に強いんですけど、ユンカー選手のところはいけるんじゃないかと3人で話していたので、そこに(樋口が)うまく狙ってくれて、決めることができました」
まさに、してやったりだった。強い気持ちを保ち、幻を幻のまま終わらせなかった。ゴール直後のパフォーマンスについては「腹が立ったので」と取材陣を笑わせたが、天を指さしたポーズについて聞かれると「たくさんの人が俺に携わってくれて、先祖とか、そういう人たちに向かっていつもやっているので、今日もピッチ入る時に、これだけ素晴らしい環境でやれるのは当たり前じゃないと自分では思っていたので。チームとしてて勝ててよかったです」と感謝の思いからのポーズだったと説明した。
この試合は『Jリーグ30周年記念スペシャルマッチ』と銘打たれ、注目の一戦だった。ただ、鈴木個人にとっても、チームとしてもシーズン中の1試合に過ぎないという。「アントラーズにとって特別な試合というのはあまりなくて、どの試合も同じモチベーションで臨むのが僕が知っているアントラーズ、僕が見てきた先輩方の姿。今日に限ってこのパフォーマンスじゃなくて、常にこのパフォーマンスが出せるように頑張りたいと思います」。どんな試合にも常に勝利に全力を注ぐ、鹿島の姿を体現したということだ。
試合は知念慶が84分にこぼれ球を決めて、2−0で勝利。鈴木は、言った。
「途中出場したFW、カイキも知念くんもおいしいところを持っていこうという気持ちは全くなくて、チームのために走って体を張ってという中で、ああいう球がこぼれてくる。おまけじゃないですけど、最後のご褒美みたいなものだと思う。そういう気持ちを持った中で全員が最後の締め方だったり、絶対にやられちゃいけない時間帯を共有できていると思います」
これでチームは5連勝。最前線で牽引車の役割を果たして来たのが他ならぬ鈴木だ。
「今日のファンの多さは、鹿島の選手たちが作り上げてきたもの。僕たちもそれを壊さないようにしなければと身が引き締まる思いです」
Jリーグ30年の歴史の中で、鹿島アントラーズは最もタイトルを手にしている。自身が生まれる前から存在するクラブの歩みを止めず、さらに加速させていくと鈴木は誓った。