浦和レッズは6日、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝第2戦でアルヒラルを下し、合計スコア2−1として優勝を飾った。相手にボールを握られる時間が長く、苦しい展開となったが、優勝するための戦い方を選択し、我慢強く戦い抜いて3度目のアジア王者に輝いた。この成功体験は今後、チームが目指すスタイルを築くための財産となりそうだ。

上写真=大声援で最高の雰囲気を作り上げたサポーターと選手が優勝の喜びを分かち合う(写真◎小山真司)

やりたいサッカーではないが、プロとして勝つことが第一

 浦和レッズがアジアチャンピオンズリーグ(ACL)決勝第2戦でサウジアラビアのアルヒラルを1-0で下し、2試合合計2-1で優勝を決めた。2007年、2017年に次ぐ3回目の優勝は、ACLと改称した2002年以降では最多となる。アウェーでの第1戦に続き、ゲームの内容ではアルヒラルに終始押される展開だったが、相手に90分間得点を許さず。48分に敵陣で得たFKから岩尾憲がボックス内に送り込んだボールをマリウス・ホイブラーテンがヘッドで折り返し、そのボールが相手選手のオウンゴールとなって、浦和が先制。この1点を最後まで守り切った。

 試合内容から見れば、ボールを7割がた支配してより多くのチャンスを作り出したアルヒラルが優勢であったにせよ、この試合はアジアチャンピオンを決定する決勝戦であり、何より重要なのは結果だった。浦和は勝つための戦い方を選び、優勝を手にしたと言える。

キャプテンであり、大会を通じてのMVPにも選ばれた酒井宏樹は、この日のプレーをどうリーグ戦につなげていくのかと問われて「今日(の試合)からは、ないかなと思います。僕らがしたいサッカーではなかった。ただプロとして勝つことが第一で、そのためにどういうサッカーをするかが非常に大事でした」と、決勝でのプレーは優勝するためにとった手段だったと説明した。

 マチェイ・スコルジャ監督は就任した際に「前からプレスを仕掛けるサッカー」を実践すると明言していたが、Jリーグ開幕から2連敗するとその方針をひとまず脇に置き、結果を出すために全体のラインを下げて守備を安定させる戦い方に変更した。その効果はてきめんで、ここからチームは4連勝して順位を上げ、名古屋グランパス、川崎フロンターレには引き分けつつ、リーグ7戦無敗を達成。その間にはわずか4失点と狙い通りの守備の堅さを示した。メンバーもほぼ固定して、ACLの決勝まではこの陣容を維持すると話していた。

 つまり、3月4日のJ1リーグ第3節以降はこのACL決勝を見据えた戦いを続けてきたということだ。CBのアレクサンダー・ショルツとホイブラーテンが難攻不落の壁を築き、ベテランのGK西川周作は今が全盛時と思わせるパフォーマンスでピンチを救った。この日も再三の好守でクリーンシートを実現してマッチ・オブ・ザ・プレーヤーに選出されている。右の酒井、左の明本考浩の両サイドバックも対人の強さを示し、ボランチの岩尾、伊藤敦樹は的確なポジショニングでディフェンスライン前のスクリーンとなった。そして攻撃の選手たちもハードワークを惜しまなかった。攻撃面ではなかなかボールをキープできず、チャンス作り出す回数は限られたが、守備に関してはチーム全体が役割を果たして勝利につなげた。

 ただし、酒井の言葉にあるように、今回のプレーはスコルジャ体制のレッズが本来目指していたものとは異なる。「もっとボールをキープして攻撃的にプレー、高い位置から積極的にプレスをかける」という指揮官が目指すアグレッシブなプレーを実現するのは、これからになる。そのためには西川、酒井、岩尾、興梠といったベテランに支えられていた若い選手たちがさらに成長する必要があるだろう。明本、伊藤、小泉佳穂、大久保智明らがこの優勝を機に一回りも二回りも大きくなっていく必要があるだろう。さらにはその下の世代が彼らを突き上げ、チームを刺激することも求められる。

 ACLでの戦いが目指すサッカーを途絶えさせたわけではない。守備を安定させてアジアの頂点に立ったことは、チームの財産であり、発展を促す成功体験になったに違いない。攻撃的なプレーに迷いが生まれた時に帰る場所とすることもできる。アジアチャンピオンとして、自信をもって次のステップへ進めるはずだ。

取材◎国吉好弘


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