上写真=後半から出場し、攻撃を活性化した浦和の興梠慎三(写真◎J.LEAGUE)
チャレンジのパスが出しにくくなっているのかも
背番号30の熟練されたポストワークが、攻撃を活性化させた。興梠慎三がピッチに入ると、途端にリズムが良くなった。前線の中央で敵を背負ってボールを収めたかと思えば、スペースに流れてパスを受け、サイドで起点をつくっていた。長年にわたり、当たり前のようにこなしてきた役割である。
「相手は前からプレスに来ていたので、ちょっと動けば、パスをもらえるスペースがあるかなと思っていました」
開幕戦では後半の69分から出場し、ボールに絡む回数も限られていたが、この日は何度も見せ場もつくっていた。目を見張ったのは57分のチャレンジ。中盤まで下がってボールを受けると、相手を引き付けて、最終ラインの背後に技ありのスルーパスを通す。スペースに走り込んだ酒井宏樹はシュートこそ打てなかったが、ゴールの可能性を感じさせるプレーだった。
「もうちょっと良いパスを出せた。1対1に持っていけるくらいのボールを出したかったです。相手がハイラインだったので、後ろから飛び出していけば、チャンスになりますね。監督がボールを奪われないことを大切にしているので、チャレンジのパスが出しにくくなっているのかもしれない。ただ、ボールを取られるリスクばかりを考えていると、良い攻撃はできません。僕は(リスクを冒して)狙っていきましたけど」
悔やまれるのは、流れを引き寄せた後半の時間帯にゴールを奪えなかったこと。
「2回くらい決定機があったので、決めきらないと。2試合を終えて、ノーゴール。FWとしては、もっと頑張らないといけない」
J1歴代2位の通算163ゴールを挙げているストライカーの矜持がある。期限付き移籍していた北海道コンサドーレ札幌から復帰した今季は二桁ゴールを視野に入れており、ただのジョーカーで終わるつもりはないはず。3月4日の3節はホーム開幕戦。浦和駒場スタジアムにセレッソ大阪を迎える。
「試合に出るチャンスがあれば、勝ちにいく。3連敗は阻止したい。ホームで勝って、連勝していきたい」と意気込み、前を向いた。
ゴールで存在価値を証明し、浦和のエースと呼ばれてきた男のモチベーションは高い。
取材◎杉園昌之