上写真=家長昭博は12ゴールとキャリアハイの数字を残した(写真◎J.LEAGUE)
2022年Jリーグベストイレブン
家長昭博(川崎フロンターレ)
まさにMVP級の活躍だったと言っていい。家長昭博が4度目のベストイレブンに選ばれたことは、誰もが納得の結果だろう。川崎フロンターレの攻撃を力強く牽引し、ピッチのあらゆる場所に顔を出してビルドアップに関わったと思えば、必殺のラストパス、あるいはテクニカルなフィニッシュと、その技巧で見る者を楽しませた。
そんなテクニシャンが語った言葉には、2022年のJリーグを楽しんだすべての人の記憶にとどめておきたいフットボールへの熱が込められている。
「何かを決めつけたりするのは危ないこと」
――ベストイレブン受賞、おめでとうございます。4度目ですね。
家長昭博 ありがとうございます。何回もらってもうれしいものです。でも、優勝してもらうのと2位でもらうのはまた違うなと感じています。
――過去3回はすべて優勝して受賞していますものね。今年は残念でしたが、とはいえ、同じフロンターレのマルシーニョ選手と並んで12ゴールはチームトップ、リーグ3位で、キャリアハイの数字です。
家長 PKが5本あったので、キャリアハイという感覚はあまりないんです。でも、記録上はそうなりますね(笑)。
――といっても、そのPKでもものすごいキックで決めていますよね。左上スミ、右上スミに蹴り分けたシュートは、技術も度胸も抜群で、家長選手らしいなと。
家長 どこに入ろうが、入ったらいいっていう感じです(笑)。
――さすがです。ところで、この賞はJ1の監督や選手の投票で決まります。その価値は選手にとっては大きいのではないでしょうか。
家長 チームメートであれば毎日、一緒に目標に向かって戦っている仲間ですし、対戦相手はしのぎを削る同志だと思っています。監督の皆さんを含めて、そういう方々に選んでもらえるのは意味のあることだと思います。そこは非常にうれしいですね。
――優勝争いを続ける日々において重要なことについて、以前の取材の場で「ご飯を食べて、練習して、寝るだけですよ」と答えていました。平常心を保つこと、いつもどおりに過ごすことというのは、実は簡単そうで難しいですよね。
家長 いや、そこまで難しいことではないと思っているんですよ。結局はそんなにやることは多くなくて、しっかりご飯を食べて練習して、休養すること。それをこなすのが僕の日常で、変わらないでいる、というよりは、しっかりと日常を過ごすことが大事だ、という感覚で話した記憶があります。
――なるほど、日常をしっかりとこなすことへの意識が高い、ということなんですね。ほかに印象的だったのが、パリ・サンジェルマンとの試合のあとの言葉でした。スター軍団と戦って、自分たちのことを「真剣に遊ぶ余裕がない」と表現していました。
家長 サッカーには、これをしておけばいい、とか、なにか正解があるというわけではなくて、瞬間瞬間に何を選択するかはその選手の技量や度量です。いろいろな選択肢を持てるように、いろいろな角度からものを見ることができるように、常に準備をしていかなければいけないよね、ということですね。それがゲームの中で出てくると思うので。
――真剣に遊ぶプレーは、まさに家長選手の真骨頂ですからね。
家長 それを特別意識しているわけではないですけど、凝り固まることは怖いし、何かを決めつけたりするのは危ないことだと思っています。その瞬間によい答えが出せるような準備をしているつもりです。