Jリーグは11月7日、年間表彰式の『2022Jリーグアウォーズ』を開催した。サッカーマガジンWEBも参加する「DAZN Jリーグ推進委員会」では、今季の受賞者にインタビューを実施している。ここでは優勝監督賞の受賞者、横浜F・マリノスのケヴィン・マスカット監督のインタビューをお届けする。クラブにとって3年ぶり5度目となる優勝はいかにして成し遂げられたのか?

取材・構成◎大林洋平 写真◎DAZN、J.LEAGUE

上写真=J1を制したケヴィン・マスカット監督が喜びの声(写真◎DAZN)

2022年Jリーグ優勝監督賞
ケヴィン・マスカット(横浜F・マリノス)

 2021年夏に就任し、初めてシーズンを通して指揮を執った今季、横浜F・マリノスに3年ぶりのシャーレをもたらしたケヴィン・マスカット監督。「特別なクラブになった」。異国の地で感謝の念を抱いたのは、クラブをはじめとする周囲のサポート。それがあったからこそ、攻撃的なスタイルをブレず、貫き通せたのだと語る。そして忘れてはならないのが、タフな連戦を乗り越えた大胆起用だろう。

 3連覇を狙った川崎フロンターレを上回る総合力を一体どのように引き出したのか。“マスカットマジック”とも評される采配の妙に迫った。

この賞は全員でいただいた賞です

画像: 歓喜のシャーレアップ! ケヴィン・マスカット監督が2年目で頂点に立った(写真◎J.LEAGUE)

歓喜のシャーレアップ! ケヴィン・マスカット監督が2年目で頂点に立った(写真◎J.LEAGUE)

――優勝直後の会見では「サポーターの皆さまは今夜、パーティでお祝いしてください」と言われていました。監督はどのように優勝を祝われたのでしょうか。

マスカット監督(優勝を決めた最終節の)神戸戦を終えた後、新幹線に乗って新横浜駅に着いたときには結構、疲れていたので真っ直ぐ帰宅しました。実は数日前から父が来日していて、幸い、父に優勝の瞬間を見せることができました。翌日、父と食事に行き、ジャパニーズウィスキーのボトルを何本も空けて、お祝いしました(笑)。

――あらためまして、優勝おめでとうございます。J1優勝監督賞を受賞されたいまのお気持ちを聞かせてください。

マスカット監督 とても光栄に思います。ただ、チームスポーツにおいて、“個”はないと思っています。なぜなら、自分一人ではなく、自分を手助けしてくれたスタッフの皆がいてくれたからこそ優勝できたからです。この賞は私個人に頂きましたが、横浜FMの全員にいただいた賞だと思っています。

――マスカット監督もよく知るアンジェ・ポステコグルー前監督(現セルティック監督)と同じ賞に輝きました。そして、川崎Fの3連覇を阻止した状況も同じです。

マスカット監督 川崎Fの3連覇を止めたのは狙ったわけではありませんし、そこに重きを置いていたわけでもありません。以前、アンジェが成し遂げたことを、今度は自分が成し遂げたのは喜ばしいことです。そして自分が彼から聞いていたのは、「横浜は特別な街で、横浜FMは特別なクラブだよ」ということです。ようやく、自分もその意味を分かった気がします。自分にとっても特別な街になり、“マリノスファミリー”という意味で特別なクラブになりました。

――“マリノスファミリー”は何が特別なのでしょうか。

マスカット監督 どんなときでもサポートし、自分のサッカーを信じてついてきてくれました。攻撃的なスタイルをブレずに貫き通せたのも、サポートしてくださる多くの方々がいたからです。具体的に知りたいのでしょうが、言葉で言い表せられるものではありません。フィーリングが大部分です。F・マリノスが創設30周年を迎え、その節目の年にタイトルを獲ったことで、みんなで特別な瞬間を味わえました。もちろん、「もう少し早めに決めてほしかった」と思われるかもしれませんが、リーグ戦を盛り上げるために最後の最後まで引っ張ったのです(笑)。そして、タイトルをもたらすことができました。

――確かに最終節まで大変な盛り上がりを見せました。優勝の要因について、試合後の会見では「一つ一つの結果の積み上げ」を挙げていましたが、転機になった試合はありましたか。

マスカット監督 常日頃から、記者の皆さんに「全員が必要。そして、全員が準備をしなければいけない」とお伝えしていましたよね。見てお分かりの通り、誰が出ても自分たちのサッカーを表現してくれたと思います。

 自分が覚えているのはシーズン序盤の3月、神戸とのホーム戦(第10節/○2-0)です。ボランチの2人は18歳と20歳でした。その試合で彼らが成果を示したことで、チームもそうですし、見ている方々も全員が自分たちを信じる気持ちが強くなったと思います。誰が出てもレベルを落とさずにプレーできる。それがこのチームなんだと。それを証明してくれたのが藤田譲瑠チマであり、山根陸でした。彼らのプレーは本当に素晴らしかったです。

――優勝したいまとなっては、多くの方々が横浜FMは誰が出ても強いと感じていると思います。一方で当時、高卒ルーキーの山根選手はその神戸戦がプロデビュー戦でしたし、藤田選手も今季加入したばかりで横浜FMでの実績はない状況でした。その神戸戦での大胆な起用はマスカット監督だからこそできた采配だと感じます。

マスカット監督 正直、当時のチーム状況がどうだったか、記憶が定かでなく、ケガ人がいたのかもしれません。ただ、(アンドレス・)イニエスタら経験豊富な選手をそろえている相手に、「本当に大丈夫なのか」と思われたはずです。でも、自分は彼らを信じていました。思い切ってプレーしてきてほしい気持ちで送り出し、その結果、期待以上のものを見せてくれました。本当に素晴らしい試合をしてくれたと感じています。


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