Jリーグは11月7日、年間表彰式の『2022Jリーグアウォーズ』を開催した。サッカーマガジンWEBも参加する「DAZN Jリーグ推進委員会」では、今季の受賞者にインタビューを実施。優秀監督賞を受賞したのは、サンフレッチェ広島のミヒャエル・スキッベ監督だ。就任1年目ながらチームを3冠を狙える位置にまで導き、悲願のカップタイトルに導いたドイツ人指揮官に、チームづくりの秘訣や指導哲学などを聞いた。

「日本の春を待ち遠しく感じている」

画像: 天皇杯決勝での敗戦から立て直し、ルヴァンカップ初優勝。サンフレッチェはJリーグ開幕後、9回目の決勝で悲願のカップタイトルを獲得した(写真◎J.LEAGUE)

天皇杯決勝での敗戦から立て直し、ルヴァンカップ初優勝。サンフレッチェはJリーグ開幕後、9回目の決勝で悲願のカップタイトルを獲得した(写真◎J.LEAGUE)

――今季の広島は天皇杯とルヴァンカップで決勝まで勝ち上がりました。カップ戦にはリーグ戦と異なるメンバーで臨むチームが多い中で、広島は大きく入れ替えずに勝ち上がりました。あらためて、狙いを教えてください。

スキッベ 選手たちを評価する際、そのとき一番良いパフォーマンスを見せている選手が試合に出られるんだよ、というメッセージが、まず含まれています。もう一つは、カップ戦へのリスペクトです。どの大会でも全力を尽くし、一番良いチームで臨む姿勢を貫くことは、大会へのリスペクトに加えて、選手にとっても非常に分かりやすいメッセージとなります。

――天皇杯決勝はJ2のヴァンフォーレ甲府にPK戦で敗れ、準優勝に終わりました。チームの受けたショックは大きかったと思いますが、そこからルヴァンカップの決勝に向かう際、スキッベ監督が意識したことや選手に掛けた声は、どんなものだったのですか。

スキッベ サンフレッチェは天皇杯で何度も決勝まで勝ち進んでいるのに、優勝したことがありません。そうしたものを必要以上に背負い込んでしまい、とてもプレーが硬くなってしまったのが敗因の一つです。延長後半にPKという大きなチャンスがあり、勝てたかもしれない試合でしたが、最終的に勝ち切れなかったわけですから、甲府が勝利に値する試合をしたと考えています。ただその後は切り替えて、決勝までにすごく良い試合を何度もやってきたことにフォーカスして、ルヴァンカップに向かうように心がけました。

――そのルヴァンカップ決勝は、後半アディショナルタイムの2得点で逆転勝利を収めました。あれほど劇的な試合は、スキッベ監督にとっても初めてなのではないですか。

スキッベ そうですね。ああいう勝利は、あまり経験がありませんが、天皇杯準々決勝のセレッソ大阪戦でも、0-1で迎えた終盤(86分)に追い付き、試合終了直前(90+1分)に逆転しています。一方で、もちろんうれしい勝利でしたが、セレッソのことを思うと、彼らにとっては非常に苦い敗戦だったでしょう。

――そうした敗者への配慮、リスペクトも忘れてはいけないと考えているのですか。

スキッベ 試合中は対戦相手ですが、それ以外では選手同士が以前チームメイトだったり、何回も対戦して友人関係にあるようなこともありますから、仲間として配慮する気持ちを持っています。戦ってはいても、同じボートに乗っている感覚ですね。

――就任会見で「2年以内に、上位で安定したパフォーマンスを見せられるようにしたい」と抱負を語っていました。結果はルヴァンカップ優勝、天皇杯準優勝、J1リーグ3位で、3大タイトルすべてで3位以内に入ったのはクラブ史上初めてです。予想以上の成果だったと考えていますか。

スキッベ 2年以内に、とは言いましたが、1年目からこういう成績を残すことにチャレンジしていました。来季はライバルも力を伸ばしてくるでしょうから、非常に難しい、今季より難しいシーズンになるのは間違いないでしょうが、良い成績を残し続けられるようにしたいです。

――サンフレッチェファミリー(ファン・サポーター)の期待も膨らんでいます。その期待に答え、ライバルを上回っていくために必要なことは何でしょうか。

スキッベ ファミリーの皆さんも、来季が難しいシーズンになるだろうということは分かっていると思います。その上で重要なことは、選手一人ひとりが自覚を持ち、良いサッカーをするために取り組むことです。それは選手だけではなく、ファミリー全体に必要なことで、苦しい状況になってもサポートしていこう、など、チーム全体が強く自覚することができれば、良いシーズンにすることができるでしょう。

――ところで、広島での生活は快適ですか?

スキッベ 広島は本当に素晴らしい街で、人も優しく、とても快適に過ごすことができています。シーズンオフはドイツに戻りますが、日本の春を待ち遠しく感じていますよ。

――日本の食べ物で一番好きなものは?

スキッベ オコノミヤキ(お好み焼き)、オスシ(お寿司)など、どれを一番にしようか迷うくらい、日本の食べ物にも満足しています。いま体型を気にしているのですが、おいしくて、たくさん食べてしまうんです(笑)。そうそう、これは興味深いのですが、ドイツのビールよりも、日本のビールの方がおいしいですよ!

――サンフレッチェファミリーの皆さんへ、来季へのメッセージをお願いします。

スキッベ 皆さんと一緒に喜び、皆さんと一緒に誇りに思えるようなサッカーができました。もちろんルヴァンカップも、全員で勝ち取ったタイトルです。来季も魅力的で、勇敢で、アグレッシブなサッカーを見せていきたいです。みんなで作り上げていきましょう。

――最後に、まもなく開幕するカタール・ワールドカップの初戦で、日本とドイツが対戦します。どこで見る予定ですか?

スキッベ 大会全般はドイツで、テレビで見ようと思っていますが、その試合だけはカタールに行って見るかもしれません。まだ正式には決めていないのですが。

――どちらが勝つと思いますか?

スキッベ 引き分けですね!(笑)

――ありがとうございました。また来年お会いしましょう!

スキッベ アリガトウゴザイマス!

取材・構成◎石倉利英

Profile◎MICHAEL SKIBBE/1965年8月4日生まれ、ドイツ出身。現役時代はシャルケでプレーし、引退後に指導者の道へ。シャルケとボルシア・ドルトムントのU-19チーム、ドルトムントのセカンドチームやトップチームの監督を務めた。2000年から2004年までドイツ代表コーチを務め、2002年日韓ワールドカップで準優勝。その後はドイツ、トルコ、スイスのクラブチームや、ギリシャ代表の監督を務めた。今季、監督就任1年目でJリーグYBCルヴァンカップ優勝、天皇杯準優勝、明治安田生命J1リーグ3位に導き、契約を更新して来季も指揮を執ることが発表されている。


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