上写真=脇坂泰斗の「14」はもう、当たり前の光景(写真◎J.LEAGUE)
「チームが苦しいときに何ができるのか」
背番号14を自ら身につけて臨んだ2022年のシーズンも、11月5日のJ1第34節で公式戦はフィナーレだ。脇坂泰斗が挑むのは、勝ち点3を加えて大逆転3連覇を射止めるチャレンジである。
レジェンドの中村憲剛さんが長く背負った背番号を受け継いだ2022年。自らに準備ができているという覚悟があったからだ。
「14番像を意識しないようにしています。自分がどういう選手かが重要で、あとからついてくるものですし、自分がこういう選手だと示せているかなと思います」
だから、中村さんからは「もう大丈夫だな」とお墨付きをもらった。「大丈夫です」と答えた。いろいろなことを乗り越えてきた自負がある。
「慣れるまでは結構、気負う、ではないですけど、でも言葉にするとそれが当てはまるのかな。そういうけど感情はありましたけど、いろんな壁があって、一つずつ課題をクリアしながら、前進しつつ後退しながら、やるべきことは終盤にかけて明確になりつつあって、気にしなくなりました。その意味では成長できているかな」
とはいえ、目指すところはまだまだ高い場所にある。
「攻撃では数字のところがもっともっとほしいなと思っています。それに、チームが苦しいときに何ができるのか、というところで、もう少しチームを勝たせることや、勝ち点を積み上げるところで、力がまだまだ足りない」
自分が良ければそれでいい、という態度は「14」に最も似つかわしくない。このチームを勝利に導くパフォーマンスを示すのに今季はもう1試合しか残っていないが、勝つことが大逆転3連覇へと通じる唯一の道だ。
相手はFC東京。アウェーでの「多摩川クラシコ」である。今年夏まで仲間として高め合った塚川孝輝が、ライバルクラブへと移って活躍している。
「トレーニングでもマッチアップすることが多かったし、お互いに特長もわかっているので、自分が良さを出して相手には出させないように、具体的には言えないけれどイメージはできています」
FC東京が首位の横浜F・マリノスと対戦した9月3日の第28節では、塚川自身が2ゴールを決めて2-2のドローに持ち込んでいる。その試合後、塚川は「もうチームは違うけれど、少しでも貢献できたらという思いがありました。結果は引き分けだったけれど、少しは恩返しできたかな」と、首位を追撃していた川崎Fへの援護の思いを明かしていた。確かにその「恩返し弾」があったから、最終節まで優勝争いがもつれ込んだ。だが、塚川自身が古巣と対戦するこの一戦では、遠慮なく向かってくるだろう。
「移籍するときから、ガツガツいくよ、と言われています」
脇坂も望むところだと笑う。
試合前のオンライン会見もこれが今季最後だった。画面の向こうの報道陣に「1年間、ありがとうございました」と礼儀正しくあいさつしたあとに、大切な一言を残した。
「絶対優勝します」
11月5日、何かを起こしてみせる。