天皇杯JFA第102回全日本サッカー選手権大会は10月5日に準決勝を迎えた。J2で唯一勝ち残っているヴァンフォーレ甲府は、鹿島アントラーズを下してクラブ初の決勝に進出する快挙を達成。サンフレッチェ広島は延長戦の末に京都サンガF.C.を破って頂点を争う。

上写真=甲府がクラブ初の決勝へ!(写真◎JFA)

「塊を作って頑張るしかない」と甲府・吉田監督

■2022年10月5日 天皇杯準決勝(カシマ/8,965人)
甲府 1-0 鹿島
得点者:(甲)宮崎純真

【甲府】GK1河田晃兵 DF2須貝英大、5浦上仁騎、40エドゥアルド・マンシャ MF23関口正大、26石川俊輝、24山田陸(83分、20松本凪生)、7荒木翔(73分、22野澤陸)、41長谷川元希、19宮崎純真(83分、18鳥海芳樹) FW9三平和司(73分、10ウィリアン・リラ)

【鹿島】GK1クォン・スンテ DF22広瀬陸斗(86分、20キム・ミンテ)、5関川郁万、6三竿健斗、2安西幸輝 MF14樋口雄太、21ディエゴ・ピトゥカ、30名古新太郎(46分、33仲間隼斗)、17アルトゥール・カイキ(76分、27松村優太) FW8土居聖真(46分、9エヴェラウド)、40鈴木優磨

 J2のヴァンフォーレ甲府がまたもジャイアントキリングだ。10月5日の天皇杯準決勝でJ1の鹿島アントラーズを1-0で破り、クラブ初の決勝進出を達成した。J1の4クラブを連破した吉田達磨監督は「小粒なチームなので、みんなで協力して塊を作って頑張るしかない」と胸を張った。

 降りしきる雨と強い風の中でのゲームは、甲府が5バックで構えつつもコンパクトに守る陣形を、鹿島の強力な攻撃陣がどう封じていくかが注目だった。22分に鈴木が狙ったシュートがわずか左に外れたものの、主導権を握っていたのは確かに鹿島。しかし、先制したのは甲府だった。

 37分、最終ラインの浦上が前線に柔らかな縦パスを鹿島のDFの裏へ送り込むと、抜け出した宮崎が鮮やかなコントロールから、中途半端に飛び出したGKクォン・スンテをかわして無人のゴールに流し込んだ。「抜けた瞬間に三平さんが行っていいぞと声をかけてくれて、キーパーの位置も確認できたので、すべて冷静にプレーできました」と宮崎は喜んだ。

 同点に追いつきたい鹿島は、後半開始から仲間とエヴェラウドを投入。攻撃へのパワーを強めると、サイドからのクロスを多用してエヴェラウドの高さやセカンドボールの回収からの2次攻撃を繰り返し、じわじわと甲府ゴールに迫っていく。後半のほとんどを相手陣内でプレーしたが、どうしてもゴールを割れない。時間が進むにつれて焦りからか攻撃も淡白になり、このままタイムアップ。

 甲府が初めて進んだ準決勝で、カシマスタジアムで鹿島を下すアップセットを見せて、ついに決勝へたどり着いた。荒木が「失うものはないしいまから楽しみです。僕たちがワクワクしていることをピッチで表現できれば、ファン・サポーターも思いきって応援してくれると思うので、それに応えられるように頑張りたい」と意欲を語れば、鹿島から殊勲の決勝弾を決めた宮崎も「大舞台に強いほうだと思っているので、決勝も頑張りたい」と目を輝かせた。

 敗れた鹿島はこれで、6年連続で国内のビッグタイトル無冠という悔しい結果に終わった。

「決勝で古巣と戦えるのは幸せ」と広島・佐々木

■2022年10月5日 天皇杯準決勝(サンガS/6,787人)
京都 1-2(延長)広島
得点者:(京)イスマイラ
    (広)ドウグラス・ヴィエイラ、ナッシム・ベン・カリファ

【京都】GK32マイケル・ウッド DF8荒木大吾、15長井一真、4メンデス MF27山田楓喜(66分、31井上黎生人)、33三沢直人、19金子大毅、28田中和樹(72分、37植田悠太、101分、3麻田将吾)、13宮吉拓実(72分、25中野桂太)、47パウリーニョ(66分、39イスマイラ) FW9ピーター・ウタカ(76分、24川崎颯太)

【広島】GK38大迫敬介 DF2野上結貴、4荒木隼人、19佐々木翔 MF25茶島雄介(80分、21住吉ジェラニレショーン)、27川村拓夢、7野津田岳人、18柏好文、10森島司(80分、14エゼキエウ、120+2分、20ピエロス・ソティリウ)、39満田誠(119分、17松本泰志) FW9ドウグラス・ヴィエイラ(58分、13ナッシム・ベン・カリファ)

 準決勝のもう1試合は、最後の最後までお互いが激しくしのぎを削る白熱のゲーム。延長戦の末に広島が京都を2-1で下して決勝進出を果たした。

 京都のホームスタジアムで行われた一戦は、その京都が4日前のJ1鳥栖戦から先発メンバー全員を入れ替えるという布陣で臨んだ。しかし、逆にほとんどメンバーを変えなかった広島が連係で上回り、京都陣内でプレーする時間が長かった。京都も持ち味のボールへのアタックで対抗、31分には宮吉が引っかけて右のパウリーニョへ、折り返しを宮吉が狙うが、わずかに左に切れるチャンスもあった。

 先制点は広島にとっては幸運な流れから。右から満田がドリブルで進入してクロス、これがメンデスの手に当たったとして、VARチェックのあとのオンフィールドレビューで主審がPKの判定に。これをドウグラス・ヴィエイラが左に決めて、40分に広島が先制した。

 後半も広島の優勢は大きく変わらなかったが、京都が20歳の中野、18歳の植田、21歳の川崎と若い力を投入すると、疲れも見え始めた広島を上回って徐々に盛り返していく。すると、79分だった。右サイドを川崎、荒木、イスマイラとつないでスピーディーに破ると、最後は相手に当たったこぼれ球をイスマイラがゴール右からニアのトップコーナーに豪快に突き刺して、ついに同点に追いついた。

 お互いに譲らない白熱の攻防で90分では決着がつかず、延長戦へ。すると開始直後の95分、一瞬のスキを突いて住吉の縦パスをエゼキエウがヒールで右裏に流すと、走り込んだエゼキエウが「素晴らしいパスが来たので決めるだけだった。ファーストタッチがうまくいった」と逆サイドにきれいに流し込むシュートを決めて、またも勝ち越した。

 京都も最後まであきらめず、中野の右足や井上のヘッドなどで広島ゴールに力強く迫るが、このまま広島が逃げ切りに成功。9年ぶりの決勝進出を決めた。決勝の相手は甲府。佐々木にとっては古巣で「ハードに最後まで戦ったことが勝因。サッカー選手として決勝の舞台で古巣と戦えるのは幸せです」と笑顔だった。広島はルヴァンカップでも決勝に進出しており、J1でも可能性を残したまま3冠を狙う唯一のチームだ。

 甲府と広島の決勝は、10月16日13時50分から日産スタジアムで行われる。


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