上写真=脇坂泰斗は広島戦で1ゴールのほか、PK獲得も。この人が活躍すれば川崎Fは強い(写真◎J.LEAGUE)
「でも、続けないと意味がない」
あの90分が、脇坂泰斗の中では「ヒントになる」という。3位の川崎フロンターレが2位のサンフレッチェ広島を破ってその座を奪い返した4-0の大勝である。
「自分たちの良さを出すことができましたし、相手の良さを消すこともできました」
その両面から、自信をつかんだ。
「自分たちがボールを持ちながら試合を作っていくこともそうですし、得点によってゲームを支配することが大事です。1点だったら終盤になれば相手に元気が出てくるけれど、2点、3点と重ねると相手のメンタルも折れてきます。そのための崩しのパターンや、前線から守備で奪って得点までいくところにも課題はたくさんありますけど、広島戦がいいきっかけになります」
自らのゴールやチャンスメークが、自信の源だ。まずは59分、相手の右からのスローインを奪ってつなぎ、橘田健人がシュートフェイントから左へ、マルシーニョが中へと送ると、脇坂が反時計回りにターンしてゴール左へ送り込んだ。
冷静すぎるフィニッシュ。左ポストに当たったが、そのままゴールに転がり込んだ。
「ボールを受ける前から相手をかわすところまで、思い通りにいき過ぎて、顔を上げたときに余裕があり過ぎました。思いきり蹴っても外れるかもしれないと思って、キーパーの位置を見てコースに流し込むイメージでした」
もう一つがPKを獲得したシーンだ。66分、山根視来からの浮き球のパスをボックス内で胸トラップ、相手のスライディングを誘うように一拍待って倒された。
「ディフェンダーもあそこはシュートコースを消しに来るのがセオリーなので、それを利用しました。でも、かわして打って決められればよかったんですけど」
PK獲得で満足するのではなく、あくまで得点を狙いにいったものの、失敗に終わった悔しさも顔をのぞかせる。
そんな攻撃に重きを置くチームだが、成功の背景に守備の整理があることもこの試合で実感できた。
「トレーニングで整理できていて、特に攻守の切り替えのところはチーム全員で意識していました。広島戦では自分が相手のボランチにいくのかウイングバックにいくのか、後ろからの声掛けがスムーズだったんです。だから、自分が出ていきやすかった。後ろの声と前の限定が広島戦は良かったと思います」
スコアも内容も満足の勝利だが、「でも、続けないと意味がない」のは明らかだ。中3日で戦う相手は名古屋グランパス。広島と同じように、3バックである。
「同じ3バックでも守り方は違いますし、名古屋さんは5枚でしっかり守ったりすることもしてくるチームです。だから、広島戦が参考にならない部分もある」
同じようにはいかないだろう、という警戒心は強い。ただしもちろん、広島戦のエッセンスを生かすこともできる。
「一つ言えるのは、攻撃で自分たちがボールを持ち続けることが大事になるということです。前から奪いに来てもボールを保持して食いつかせたところで背後を突いたり、3バックとボランチの間にボールを落として前向きでサポートするところは、広島戦と重なるところはあると思います。自分たちからボールを持つ姿勢を続ければ、相手のリアクションを見ることができますから」
首位の横浜F・マリノスとは3ポイント差。広島戦で手にした「勝利の法則」で勝ち続けていくだけだ。