上写真=住吉ジェラニレショーンは今季2試合目の先発で「いい経験ができた」(写真◎J.LEAGUE)
■2022年9月10日 J1リーグ第29節(等々力/20,873人)
川崎F 4-0 広島
得点者:(川)家長昭博2、脇坂泰斗、知念慶
「縦を切るということだけを統一して」
脇坂泰斗の左足の切り返しは、あまりにも深かった。住吉ジェラニレショーンが左足を出したときには、遅かった。その足が脇坂を払うように引っかけて倒してしまい、PKを献上した。
「試合でパニックになったことはないですけど、あのPKのシーンは予想外のパスで、やられたなという感じで、本当に悔しかったです」
68分にこれを知念慶に決められて0-3とされるが、住吉のエリアは川崎Fの狙いと広島の対応がぶつかり合うホットゾーンになっていた。3センターバックの右に立つ住吉は、右ウイングバックの野上結貴と連係してサイドのスペースをケアしていた。しかし、川崎Fが中央に人を集めておいてから、住吉の外側、野上の背中側のゾーンに快足のマルシーニョを何度も走らせ、あるいは佐々木旭や橘田健人とのコンビネーションで狙ってきた。
34分にこのサイドを破られて先制されると、ミヒャエル・スキッべ監督は後半から野上に代えて満田誠を投入した。守備に強みを誇る野上から、快活に前線に出ていく満田へのスイッチは、逆襲への合図だった。
「ディフェンスの面では求めることは変わりませんでした」と住吉。野上であろうと満田であろうと、あるいはほかの誰であろうと、守備のタスクは変わらないと強調する。
「自分の中では誰であっても遜色ないですけど、一つだけ話し合いをしました」
それは守備の基本だけは抑えておいて、満田を前に出そうとする意識からだった。
「守備のときに縦を切ればいい。それだけやっていけば、あとは声をかけていつもどおりにプレーすればよかった。縦を切るということだけを統一していこうと話しました」
だが、スキッべ監督が「交代選手だけではなく全体がよくなかった」と振り返った通り、満田の出来に関わらず後半もこのエリアを崩されて、結局4失点すべては右サイドの攻防がきっかけになった。
「両サイドが張って、マルシーニョは縦に早く出てくるので一発でいかれると決定機になってしまって下げられて、疲労もあったので押し上げられませんでした」
最終ラインを押し戻せなかった実感をこう話す住吉は、今季のリーグ戦ではこれが6試合目の出場で、先発は2試合目。「フロンターレといういいチームが相手で、上位相手にものすごくいい経験ができたとは思います」と刻み込まれた苦々しさは、いつか笑って振り返られるようにしたい。
「頭を整理して試合に出てもう1回改善できればいいですけど、練習しかないですね」
スキッべ監督も「ものすごく成長してます」と認める24歳のセンターバック。次の出番に向けて日々鍛えて、この悔しさをぶつけるつもりだ。
取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE