上写真=「左サイドバック車屋紳太郎」はボール奪取も組み立ても勝負のパスも、すべてにハイレベルだった(写真◎J.LEAGUE)
鬼木達監督も「圧巻」と大絶賛
左サイドバックではなく、センターバックで勝負すると宣言した男が、また左サイドバックで輝いた。車屋紳太郎がサガン鳥栖戦で見せた好プレーの連続は間違いなく、4-0で完勝したチームの力になった。
「チームに何かアクシデントが起こればプレーするように言われています。でも今年は練習でもサイドバックはほとんどやっていないので、やるときは割りきってやるというか、思いきってやろうという気持ちだけ意識していました」
左サイドバックとしての先発出場は、2021年4月11日のFC東京戦以来となった。鬼木達監督も「圧巻のプレーでしたね」と大絶賛だ。
「サイドの守備で奪いきれますし、カバーするスピードもありますし、攻撃になればオーバーラップはもちろん作りの部分にも参加して、ボールを触っている回数も一番多いのではないかな。本人がセンターバックで勝負したい思いを持っている中でサイドバックとしての出場になりましたけど、チームとして頼りになりますし、ほかの選手もそういう思いだったと思います。いまのサッカーはもうポジションの概念はなくなってきているので、『サッカー選手・車屋』として素晴らしいプレーでしたね」
謙遜もあるだろうが、本人は控えめだ。
「本当に自分のできることをやろうと。ノボリくん(登里享平)や(佐々木)旭のようなプレーはできないので、自分でできるプレー、そのときそのときでいいプレーができるように、90分集中してプレーするようにしました」
下手に背伸びしないことが、車屋の魅力であり強みである。そんな「いいプレー」は数あれど、87分の一本のパスは象徴的だ。
左サイドのやや内側で受けてから少し外に持ち運んでから相手の動きを見ながら左裏へスルーパス、宮城天が抜け出して中央へ送ると、小林悠がニアで競り合ったこぼれ球を大島僚太が蹴り込んで、仕上げの4点目が生まれた。
「うまく相手と駆け引きできたし、天とのコンビも、センターバックでプレーしていてもあのようなシーンは多いので、形になったのはこれからにもつながると思います」
ポジションを下げた相手の中盤の空いたスペースに持ち出していって、意図のあるパスを送るのは、センターバックでプレーするときに何度も見せてきた。だから、無理も無駄もないパスだった。
「うまく三角形を使いながら回すことができましたし、センターバックをやることで前の選手の動きはよく見るようになって、ポジショニングの重要性もわかってきました。ノボリくんの動きを参考にしながら、なおかつ自分らしさを出していければいいと思ってプレーしました」
その思いが凝縮されたのか、あのパスだった。
まさしく「サッカー選手・車屋紳太郎」の真骨頂。3連覇へ向けたこのチームの総合力を象徴するようなハイパフォーマンスの数々が、頼もしい。