「おかげで体も軽くなりました」
「ああいう展開は危ないですし、ワンチャンスを生かされる状況ではありました。でも、いまのチーム状況を見ていれば、いい方向に向いていると感じています」
2つのゴールが取り消されて気の緩みが生まれてもおかしくはないところで効いたのは、プレスバックの強烈な意識だ。伊藤敦樹も「攻守の切り替えを意識してできていますし、圧倒できているとやりながら感じています」と胸を張った。関根も最後まで猛烈に追いかけ回して、相手に攻撃の一歩を出させなかった。
「僕にはチャンスの試合でしたし、やりきりたい思いがあったので、最後まで走れるだけ走ろうと」
ポジションを奪い返したい思いで走り、さらに背中を押してくれたのが、サポーターの大声援だった。
「(関根コールは)聞こえました。歌も久しぶりに聞いて、そういえばこんな歌だったな、と思い出しましたし、声援が力になるなと改めて思いました。そのおかげで体も軽くなりましたし、サポートしてもらっている感覚があります」
自ら勝負のゲームと心して臨んだ試合で、幻のゴールと1アシスト。悪くはない、でも…というのが、本人の感触のようだ。
「今日は本当に出し切れた感覚がありますけど、もっとできた部分もあっただろうし、もっとゴールもチャンスメークもできればよかったです。もっと数字を残したかったなという思いもあります」
ラウンド16のジョホール・ダルル・タクジム戦でも、左サイドいっぱいで受けてから右のアウトサイドで蹴って、ゴールに向かうような回転をかけて前方のスペースへ走り込んだ江坂任にぴたり。そのボールがキャスパー・ユンカーに渡って、チームの5点目が生まれている。2試合連続で結果を残しているのも、確かな事実である。
「大久保(智明)選手が出られないコンディションだったので、僕が出ただけ」と控えめに語るが、この大会には「忘れ物」がある。
クラブ2度目の優勝を果たした2017年大会は、ラウンド16までは出場したものの、8月にドイツのインゴルシュタットに移籍したためにそれ以降を戦えなかった。次に決勝まで進んだ19年大会では、シーズン途中に浦和に戻って主力としてチームを引っ張ったものの、決勝で敗れて涙をのんだ。
ポジションも優勝カップも、もう誰かに渡すつもりはない。まずは8月25日の全北現代戦で、3試合続けて結果を残して勝利を手にしてみせる。
取材◎平澤大輔 写真◎AFC