JリーグYBCルヴァンカップで、横浜F・マリノスはサンフレッチェ広島に2戦とも敗れて、ベスト8で姿を消すことになった。広島のFWベンカリファに「形があるので合わせやすい」と相性の良さを指摘されたが、質を高めてその形を超えていく挑戦を続けていくだけだ。

上写真=横浜FMでキャプテンマークを巻いた水沼宏太。苦しい展開にも走り回って同点ゴールをアシスト、ベンチに下がっても鼓舞し続けた(写真◎J.LEAGUE)

■2022年8月10日 ルヴァン杯準々決勝第2戦(ニッパツ/9,255人)
横浜FM 1-2 広島
得点者:(横)レオ・セアラ
    (広)ナッシム・ベンカリファ、野上結貴
※広島が2勝で準決勝に進出

画像: ■2022年8月10日 ルヴァン杯準々決勝第2戦(ニッパツ/9,255人) 横浜FM 1-2 広島 得点者:(横)レオ・セアラ (広)ナッシム・ベンカリファ、野上結貴 ※広島が2勝で準決勝に進出

「自分がゲームを壊した」と畠中

 サンフレッチェ広島に連続で黒星。準々決勝から参加した横浜F・マリノスのルヴァンカップへの挑戦は、たった2試合を戦っただけで、ベスト8で終わった。

「特にそこまで語るようなことはない」がケヴィン・マスカット監督の最初の言葉だが、それは本音ではなかっただろう。そのあとに強調したのは、立ち上がりは素晴らしかったこと、ミスからの失点と退場劇でプランが崩れたこと、という分析が含まれていた。

 第1戦では1-3で敗れていて、アウェーゴールは持ち帰ったものの、第2戦では無失点かつ複数得点が目指すべきところだった。それがわずか8分で狂った。

「最初の5、6分まではいいスタートを切れましたし、最初にビッグチャンスを作りました」

 マスカット監督が悔やみ、敵将のミヒャエル・スキッベ監督もこれが勝負の分かれ道になったと認めたのが、横浜FMのビッグシーンだ。勝利への意欲が強く表れた序盤、4分には左から右横につないで、藤田譲瑠チマがラストパス、最後は水沼宏太が鋭く狙ったが、GK大迫敬介の好守にあって、いきなりのビッグチャンスを逃した。

「数分後に自分たちから相手に与えてしまったような形で失点してしまい、さらに1人少なくなってゲームを難しくしてしまいました」

 マスカット監督がそう説明したのは、まずは8分のシーン。畠中槙之輔が最終ラインの中央で相手の横パスをカットしたところまでは良かったが、一瞬のストップモーションのスキに背後からナッシム・ベンカリファにボールをさらわれて、そのまま決められてしまった。

「相手の横パスのミスを取ってパスを選択しようとしましたが、距離が近くて難しいと思って時間を作ろうと思ったところに相手が狙ってきました。自分の不注意でした」

 畠中が一瞬、足を止めたのは、そういう理由だった。

「複数点を取っていかなければいけない試合で、そのために準備していたのに、自分の不用意なミスで壊してしまいました。流れで一人少なくなってしまいましたが、その前に自分がこのゲーム壊して難しい展開にしてしまったなと」

 14分にもミスからボールを奪われて、森島司が抜け出そうというところで角田涼太朗が引っ掛けて、得点機会阻止としてすかさずレッドカードが提示された。だが、畠中はすべての責任を背負うように、早々の失点への反省の言葉を絞り出したのだった。

「一人少なくなったあとにも、早い段階で1点を返しましたし、後ろはそのまま耐え続けて少ないチャンスで2、3点を取るプランを考えていました。でも耐えきれずに、前半のうちにまた失点してしまいました。失うものはなかったからもっとやらなければいけなかったけれど、自分たちの時間で長くボールキープができませんでした」

 マスカット監督は退場劇のあと、藤田に代わってセンターバックの實藤友紀を入れて最終ラインを整備し直し、中盤はセンターに渡辺皓太を置き、右の水沼、左の吉尾海夏とワイドの選手を中盤のラインにやや下げて強化、前線でマルコス・ジュニオールとレオ・セアラが構える配置にセットした。「10人になってもあきらめる姿勢はなく、最後の最後まで何をしなければいけないのか貫き通した試合ができた」と選手たちを称えた。ただ、畠中が言うように、1人少なかったこともあって「自分たちの時間」を作れなかったのも事実だった。

 一方で、対戦相手となった広島のベンカリファの指摘が示唆に富んでいる。

「Jリーグではどのチームが相手でも戦うのは難しいです。ただ、マリノスのように形を持ってサッカーをやってくれるチームはやりやすいと思います。こちらのサッカーを合わせていけますから」

 マスカット監督が胸を張る「横浜FMらしさを貫く姿勢」こそが横浜FMらしさなのであれば、技術も戦術もメンタルもコンディショニングも、相手のどんな対策をも上回る質の高さが求められる。シーズンもクライマックスへと突き進むいま、「形を超える形」を求める究極的な挑戦を続けながら、J1の残り12試合とAFCチャンピオンズリーグで、それを証明していくことになる。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE


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