上写真=鬼木達監督はケガ人も戻って競争力か高まっていることを感じている(写真◎J.LEAGUE)
極意は「人が近かったので」
6月22日は天皇杯3回戦の東京ヴェルディ戦。川崎フロンターレの鬼木達監督は「チャンスを狙っている選手もいますし、ケガ人が復帰して新たな競争が生まれています。競争の一つのゲームになっていけばいい」と、チームに新たな成長の芽を見つけている。
復帰してきたケガ人の一人がチャナティップだ。タイ代表の英雄はJ1第17節、古巣となる北海道コンサドーレ札幌との一戦で9試合ぶりに先発で復帰した。スタートのポジションは左ウイングで、前半の途中から左インサイドハーフに移っている。鬼木監督の解説。
「スタートはチャナティップがワイドで、流れを見る中で30分から35分ぐらいのところで(左インサイドハーフの遠野)大弥と完全に入れ替えました。決して全部が悪かったわけではないですけど、最後の突破に向かう部分やボールに触る回数、人のバランスを含め、1点のビハインドになったので前半のうちに追いつきたかったんです。それが良かったかどうかは別として、前でボールを動かせるようになりました。後半の最初には大弥も2本連続でシュートにいっていて、彼の背後への飛び出しも良かったと思います」
そんなポジションの微調整のハイライトは、69分ではないか。小林悠が決めた驚きのバイシクルシュートに至るシーンだ。
右外で家長昭博が受けると内側の脇坂泰斗に預け、さらにチャナティップがペナルティーエリアに入って近寄ってきて、そこに短く強いパスが入る。DFが蹴り出したボールが脇坂に当たって小林のところに届くのだが、チャナティップがインサイドでプレーして、しかもボールを受ける意志を持って脇坂に近づいたことがポイントの一つになった。
「幅を取ってからどのタイミングで中に入っていくのか。そこからの崩しでは一発でいくのか、少し刻むのかの選択だったと思います。あれだけのコンパクトさであっても彼らはプレーできるので、最後は少しラッキーだったけれど、試合を通して人が近かったのでボールがこぼれましたね」
裏へ抜ける遠野と狭い場所で受けられるチャナティップのポジションは、相手や状況によって外と中を使い分けできる。貴重なオプションができた。
そして74分には、チャナティップに代えてマルシーニョを投入している。遠野をインサイドに戻し、マルシーニョは左ウイングに配置してスピードを生かした。激しいプレスでボールを刈り取ってチーム3点目を導き出し、試合終了間際にはカウンターから2人をかわして締めくくりの5点目を決めきった。鬼木監督も「見応えがあった」と喜んだ。
競争力アップの象徴としての左サイド。次は誰がどんな活躍を見せるだろうか。