上写真=マルシーニョが独走して2人をかわし、冷静にシュート。チーム5点目で試合を締めた(写真◎J.LEAGUE)
「とても純粋」と鬼木監督
やはりこの男は「速さ」で輝く。
J1第17節の北海道コンサドーレ札幌戦で、ついに今季初めて「ノルマ」の1試合3得点を達成した小林悠のゴールは、マルシーニョの鋭い出足がもたらした。74分にピッチに入ったばかりで、パワーがあり余っていた。86分、相手ゴール近くでレアンドロ・ダミアンがDFとGKに向かって2度追いし、次のパスをマルシーニョが狙って引っ掛けて、中央へ。家長昭博のシュートのこぼれ球を小林が押し込んだ。
「試合前からデータがあったのですが、プレスをかければ前で奪えるという指示がありました。あのタイミングでダミアンとプレスをかけて2人で取ったイメージですが、あそこで取ることができて自然とゴールが生まれたという感じですね」
圧巻はラストプレーだ。90+6分、相手のFKを谷口彰悟がヘッドで前線へ送ると、これを受けたマルシーニョが一人旅。最後はゴール右へと流し込んで、試合を締めくくった。
クリアボールを受けた瞬間、「4-2だったしラストプレーになると考えていたので、あのボールは自分のもので、勝負していいと思った」と迷いはなかった。まず菅大輝の前に入って突き進み、待ち構える福森晃斗を左にかわし、追いついた菅を今度は右に切り返して、右足でGK中野小次郎の右を抜いた。一気にスピードで抜いたように見えて、緻密な分析と計算があった。
最初は、後ろから追いかけてきた菅との勝負。
「ボールを自分の近くに置いて飛び込ませるイメージでした。すでにイエローカードをもらっていたので、飛び込みづらいだろうという印象がありました。相手が食いついてきたところでタッチして離れて、飛び込めなかった相手を避けるような形になりましたけど、うまくはがすことができました」
すると、目の前には福森。
「中を締めてきて、右に出そうと思ったけれどゴールへのアングルがなくなるので、内側にボールを入れて左にかわしたのが大きかったですね」
そこに菅が追いすがる。
「ボールを前にさらしてゴールを見たら右にコースがあったので、今度は右に切り返しました」
そして落ち着いて、右足で右へフィニッシュ。
この日、左ウイングは負傷から復帰したチャナティップが先発し、前半途中からインサイドハーフだった遠野大弥がポジションを入れ替えてワイドでプレー、74分からはチャナティップに代わって入ったマルシーニョが担当した。それぞれに強みを出しながらの90分で、ポジション争いはますます激しくなった。
「チームのため、自分のために成長できるように、練習していきたい」
鬼木達監督が「とても純粋」と称える一途なキャラクターで自らを高めて、マルシーニョは次の勝利にも貢献していく。