上写真=大島僚太が帰ってきた。攻撃に人数をかけたい鬼木達監督の狙いを体現した(写真◎J.LEAGUE)
■2022年6月18日 J1リーグ第17節(等々力/18,960人)
川崎F 5-2 札幌
得点者:(川)家長昭博2、小林悠2、マルシーニョ
(札)青木亮太、荒野拓馬
「頑張って背後に走ったりすれば」
J1では3月19日以来、10試合ぶりのピッチを、大島僚太は楽しめたというわけにはいかなかった。
「僕のミスで失点しているので、楽しめたというより救われたなという思いの方が結果的には大きいと思います」
28分、北海道コンサドーレ札幌の先制ゴールのシーン。最終ラインの前で駒井善成が前を向いて中央に斜めに差し込んだところを、大島は読んでいた。しかし、ボールタッチがゴール前に流れ、走り込んだ青木亮太への「アシスト」になって蹴り込まれてしまう。
「結果がすべてなのでそこは見直して、もっと早く戻れるように整理しておかなければいけなかった」
だから、逆転できたことに胸をなでおろしたのだ。
鬼木達監督は「自分たちのサッカーってなんなんだ、と考えながらやれたゲーム」と表現した。それはもちろん、ゴールを決めることである。すべての選手が攻撃への意識を高める中で、いわば「最後のピース」がアンカーとしてプレーした大島だった。
「彼が入ることでゲームの展開や時間を作れます。ビジョンがあることが大きいですよね」
大島自身は「アンカーの定義はよくわからないですけど」とうそぶくが、ボールを引き出し、動かし、ときには自分がフィニッシャーとしてゴール前に入り込み、シュートも2本放って、大島なりの答えを出した。橘田健人やジョアン・シミッチと守備に強みを発揮する選手がプレーすることの多いこのポジション。そこに大島で変化をつけられれば、試合運びの幅が格段に広がる。
「札幌のようにマンツーマンで来たら、頑張って背後に走ったりすればと思っていました。最初はそういうシーンがあったけど、体力的にしんどくなるなと思って」
そんなふうに笑って工夫を振り返るが、「あまりきれいにはがせなかったので、そこはメンタル的なのか考え方なのか整理しつつ、アウェーのときに同じ戦い方になると思うので、そこで圧倒的な持ち方にしたいと思います」とリベンジを誓う。
終わってみれば、フル出場。
「最後まで出ると思っていなかったですし、ジョアン(シミッチ)が出てきたときに交代だと思ったけど、ジョアンにノーって言われて、『ああ、もう90だ』と。でも結果として、90分終わってみれば、最後に勝利のホイッスルを聞けたことは次へのモチベーションにもなるし、長くプレーしたいと思っていたので、聞けてよかったなと思います」
心に残るホイッスルの音。次もまた聞くつもりだ。
取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE