上写真=味の素スタジアムで別れを告げた小川諒也。多くの拍手で送り出された(写真◎J.LEAGUE)
■2022年5月29日 J1リーグ第16節(味スタ/28,436人)
FC東京 3-1 鹿島
得点者:(F)渡邊凌磨2、ディエゴ・オリヴェイラ
(鹿)上田綺世
「斜めのパスは攻撃に効果的」
「成長したな、と思いましたね」
鹿島アントラーズとの試合後、サポーターへのスピーチで見せた堂々たる振る舞いについて、小川諒也が思わず自画自賛で笑わせた。ポルトガルのギマランイス(ヴィトーリア)への期限付き移籍が発表された翌日のこの試合が、ホームの味の素スタジアムで戦うJ1ではラストマッチになった。セレモニーでは多くの人に感謝を伝えて、実直さをうかがわせるメッセージを残した。
快勝を収めた直後だったことも、良かったかもしれない。首位に立つ鹿島に対して渡邊凌磨の2ゴールとディエゴ・オリヴェイラのPKで3点をリード。そのすぐ後に1点を返されたものの、その先は許さなかった。「いつもと変わらない感じではありましたけど、とにかく勝ちたい、どんな形でもいいから勝ちたいと強く思ったゲームではありました」という小川の願いが、みんなの足を動かしたのかもしれない。
しかも、1点目のきっかけになるプレーを見せた手応えもあっただろう。33分の先制ゴールは左サイドから中に持ち運んだところがスタートになった。中央の渡邊へとボールを預け、そこからディエゴ・オリヴェイラとのワンツーで抜けた渡邊がきっちりゴール右に決めた。
「凌磨はあそこで自由にプレーしていいと言われていて、ライン間で受けるイメージはあったし、その前にディエゴが一度抜け出して引っ張っていて凌磨が空いていました。そこにボールを斜めに入れて、相手が出てくるのか出てこないのか。出てきたから、凌磨がワンツーでスペースを突けたし、出てこなければそのまま打てる状況でした。斜めのパスは攻撃に効果的です」
最後にまた一つ、味スタにしっかりと足跡を残した。
ゴールを決めた渡邊はドイツでのプレー経験がある。「言葉を覚える努力を忘れずに」というメッセージを伝えたそうだ。もちろん、小川は勉強を重ねてきた。
「ポルトガル行きが決まってから、凌磨にはドイツでの経験から何をしたらいいか聞きました。言葉に関しては、英語はコロナの時期にやっていたので、ある程度は話せるかもしれないですね」
準備は万端、と思いきや。
「ポルトガルで英語は通じないからとアルベル監督に言われたので、これからポルトガル語を勉強します」
大勢の報道陣を一斉に笑わせて、コミュニケーション能力の高さを証明してみせた。サポーターへのあいさつでも、感動のまま締めるのかと思わせて、「あ、でも、まだあと1カ月あるのでよろしくお願いします」でひと笑い。味スタでのJ1は最後だが、6月18日の第17節湘南ベルマーレ戦、26日の第18節サガン鳥栖戦とアウェーで2試合がある。少し早いお別れになったが、残り2試合もしっかり応援してほしいという惜別のメッセージなのである。
現地取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE