上写真=広島では7年ぶりとなるゴールを決めた野津田は、メインスタンドの一角にいる佐藤氏に向けて、現役時代の背番号『11』を見せた(写真◎J.LEAGUE)
■2022年5月28日 J1リーグ第16節(@Eスタ:観衆9,937人)
広島 1-0 名古屋
得点者=(広)野津田岳人
「頭が真っ白になった」
スコアレスで迎えた58分、広島はゴール前右サイドでFKのチャンスを得ると、野津田が左足を振り抜く。人壁を越えたボールは鋭く落ち、名古屋GK武田洋平も触ることができない弾道でネットを揺らした。
過去に広島では、別の選手が短く蹴ったFKを蹴り込んだゴールはあったが、直接決めたのは初めて。広島のファン・サポーターが待つコーナーフラッグ付近にダッシュすると、駆け寄ってきたチームメイトの手荒い祝福を受けた。
さらに殊勲の背番号7は、コーナーフラッグをつかむゴールパフォーマンスから、両手の人差し指で『11』を作り、メインスタンドに向かって高々と掲げた。コーナーフラッグをつかむパフォーマンスは、試合後の引退セレモニーに備えて来場していた佐藤寿人氏が現役時代に見せていたもので、『11』は現役時代の背番号。2つのパフォーマンスに、先輩への思いが表れていた。
「一番お世話になった、自分がサンフレッチェでやる(プレーする)夢を与えてくれた、偉大な先輩。その先輩が来てセレモニーをする日に決めたいという、特別な思いがあった」と振り返る。だからこそ「自然にフラッグをつかんでいた」というパフォーマンスから、「寿人さんがいるのは見えていた」という場所に向かって『11』を掲げた。
2016年の開幕後にアルビレックス新潟に期限付き移籍し、その後も清水エスパルス、ベガルタ仙台に期限付き移籍。満を持して復帰した19年から、同じ広島出身で広島ユースからプロになった先輩、森﨑浩司氏がつけていた背番号7を受け継いだ。
だが19年と20年は公式戦無得点に終わり、21年はヴァンフォーレ甲府に期限付き移籍した。今度こその思いで再び復帰した今季は中盤で定位置をつかんだものの、前節まで無得点。「広島に帰ってきて、ゴールを決めたいという思いとは裏腹に、決めることができなかった」と語り、「(もう)決めることがないのかな、というところまで来ていた。遠いなという気持ちがあった」と明かした。
初めて背番号7で決めた、広島では2015年以来7年ぶりとなるゴール。決めた直後は「『本当に入ったのかな』という感じで、頭が真っ白になった。実感が湧かなかった」というが、「みんなが(祝福に)来てくれて、サポーターが目の前で喜んでいる姿を見て、やっと入ったんだという気持ちになった」と喜んだ。
複数の選手・スタッフが新型コロナウイルス感染症の陽性診断を受けた影響で中止となった5月25日の第15節・ガンバ大阪戦を挟んで2連勝。リーグ戦は中断期間に入り、6月1日に天皇杯2回戦、4日と11日にJリーグYBCルヴァンカップのプレーオフステージを戦う。「もっと上に行きたい。リーグ戦もそうですが、カップ戦もチャンスだと思っている」と強調した野津田は、「チーム全員で戦って、誰が出ても変わらないサッカーを見せ続けたい。強いサンフレッチェを見せていくためにも、どんな大会でも全力で、一つひとつ勝っていきたいし、それに自分も毎試合、貢献していきたい」と今後を見据えていた。
現地取材◎石倉利英 写真◎J.LEAGUE