上写真=鬼木達監督は「勝利と内容は別だと思っているので、自分はしっかり突き詰めないと」(写真◎J.LEAGUE)
13試合中8試合で無失点
サガン鳥栖対川崎フロンターレ。興味深いカードが5月21日に待っている。
新進気鋭の川井健太監督も、実績抜群の鬼木達監督も、試合への臨み方が似ている。相手の戦い方を十分考慮に入れながらも、あくまで自分たちのスタイルをぶつけていく。相手の長所をつぶすのではなく、自分たちの長所を真正面からぶつけ合う好ゲームへの期待は高まる。
鬼木達監督はもちろん、その腹づもりだ。
「自分たちは変わらないですし、鳥栖もスタイルは変わらないと思います。基本的には自分たちのサッカーを押し進めていきますし、お互いそういう狙いだと思います」
偶然にも、どちらも直近の相手がヴィッセル神戸だった。鳥栖は5月14日に0-4で敗れ、川崎Fは18日に1-0で勝っている。一つのバロメーターにはなりそうだが、鳥栖は1週間の時間があり、川崎Fは中2日でアウェー連戦を戦う、という違いがある。高強度のスタイルを打ち出す鳥栖にとっては、有利かもしれない。
川崎Fはその神戸戦では、後半開始早々に連続して大ピンチを迎えた。どちらも失点してもおかしくないシーン。
「こういうことはよく起こります」と鬼木監督。前半は神戸がじっくり構えて守ってきて、川崎Fがボールを動かす時間が長かった。
「前半に主導権を握っているゲームでは、後半になると一度ブレイクが入って相手も元気になるので、相手の方にチャンスが来るんです」
クリアミスで入れ替わられたカウンター、パスミスからきれいにつながれた速攻という連続ピンチ。それでも失点しなかったのは、相手のシュートミスに救われはしたものの「全力で戻るかどうか」だと鬼木監督。確かに、谷口彰悟、車屋紳太郎、佐々木旭らが足を止めずに全速力でカバーに帰っている。
「そこはACLで指摘しましたし、全力で戻っていれば相手がキーパーと1対1になりそうでも必ずプレッシャーになります。だからキーパーも我慢できる。そこは少し勉強しているかなと思いますし、自分も求め続けたい」
その成果が、4試合連続無失点だろう。これで、今季の13試合のうち、無失点は全部で8試合になった。最初の13試合での無失点試合は、2017年と18年で5試合、19年6試合、20年4試合、21年7試合と、この数年で最も多い。1試合3得点という鬼木監督が掲げるノルマに達していないことがクローズアップされがちだが、この守備の堅固さは王者にふさわしい。
「守備については変わらずですね。ディフェンスについて特別なことはなく、球際、切り替えというベースのところで相手に勝ちたいという思いがあるので、そのベースを高めようと話しています。あとは、もし行かれたら全力で戻ろうよ、ということです。当たり前のことを当たり前にやり続ける選手が試合には出てきますし、ちょっとしたところで最後に間に合うか間に合わないかで、徐々に間に合ってきていると思います」
攻撃は最大の防御、を地で行く川崎F。似ているポリシーを掲げる鳥栖との真っ向勝負は、今季のベストバウトの一つになるかもしれない。