上写真=鬼木達監督は清水戦の勝利を喜びながら、さらに質の高さを求めた(写真◎J.LEAGUE)
センターバックへの攻撃の要求
川崎フロンターレが一つの大きなヤマ場を乗り越えた。ACLで敗れて失意の帰国、隔離期間を過ごしながら調整して臨んだJ1第12節の清水エスパルス戦は、心身ともに難しい状況にあった。だからこそ、勝たなければならなかった。勝利こそ、ファイティングポーズを取り続けることの象徴になるからだ。鬼木達監督は改めて振り返る。
「清水戦は重要な一戦でした。そこでまずはやりたい形で進めることができましたし、勝利というものは本当に素晴らしかった。ただ……というところはもちろんあって、もっともっと質の部分でやらなくてはいけないことはあります。ACLが終わってきつい隔離もあった中でも、もっともっとと話をしたので、結果的には良かったと思います」
14分、佐々木旭が空中戦に競り勝って遠野大弥がつなぎ、レアンドロ・ダミアンが落として脇坂泰斗がペナルティーエリアに縦に差し込み、家長昭博が絶妙のキープからつないで最後は脇坂がニアのトップコーナーに突き刺した先制ゴールは、このチームらしいコンビネーションの粋だった。32分の追加点も、右サイドから運んでから脇坂が逆サイドの裏に優しく届け、マルシーニョがフリーでヘッドで送り込む鮮やかなもの。守っても失点ゼロに抑えて、勝利への強い思いを押し出した。
J1リーグ3連覇、国内3冠が次の目標になるが、そのための指標の一つに「1試合3ゴール」のノルマがある。ずっと唱えてきたこの数字は、今年も変えるつもりはない。
「勝つために一番必要なものだと思っています。サッカーの一番の喜びであり、見ている人に喜んでもらって、自分たちも喜べる状況を一つでも多く生み出したい」
だが今季はまだ、J1で1試合3ゴールを達成できていない。トライを続ける中で、その一つとして、清水戦の試合後に「センターバックもいまはいろいろなことにチャレンジしてもらってるところです」と明かしている。
「攻撃の始まりの部分で少しずついろいろなリズムやテンポをつくってもらっています。いまに始まったことではないですけれど、後ろの選手が試合をつくれるようになっていかなければならない時代ですし、自分たちもそこをより求めていきます。具体的には言えませんけれど、見てもらえれば、ある程度はこういうことかなとわかると思います」
清水戦でいえば谷口彰悟と車屋紳太郎がセンターバックで、ボールの配球や持ち運びには定評のある2人だ。そのタイミングや回数、質をより高めていく姿勢がこれからも見られるだろう。
そして、清水戦で見せた張り詰めた気迫は、続けて表現しなければ意味がない。
「次もその部分で違いを出さなければいけないゲームだと思っています。清水戦ではたくましさが少しずつ出せたけれど、その時間を伸ばさなければいけないし、福岡が相手ではかなりタフなゲームになることが予想されます。その意味で相手のタフさ以上に、自分たちが培ってきた最高のタフさを出せるかどうか。チームとしても、個人としても見せなければいけないタイミングだと思います」
次の相手はアビスパ福岡。昨季は公式戦43試合ぶりの黒星を喫した因縁の相手だが、それはアウェーでの話。ホームでは4連勝中だけに、4月9日以来、久々の等々力陸上競技場で伸び伸びと、しかしシビアに戦う。