上写真=山下敬大はこの笑顔を、今度は自分のゴールで見せるつもりだ(写真◎J.LEAGUE)
鳥栖時代は「濃い1年でした」
全身で思い切り示した喜びと、そのすぐあとの静寂を思い出す人も多いのではないか。4月6日のヴィッセル神戸戦。3-1でリードしていたFC東京には90+4分に、さらにダメ押しのゴールが生まれた。左からの三田啓貴のクロスにダイビングヘッドで押し込んだのは、山下敬大。移籍後、初ゴールだ。
この一瞬をどれだけ心待ちにしていたか、それがスタジアム全体に伝わる雄叫び。ディエゴ・オリヴェイラに抱きつかれ、サポーターに向かて何度も何度も見せたガッツポーズ。しかし、その直後にVARのチェックが入り、主審のオンフィールドレビューを経てゴールは認められなかった。飛び込んだときにボールが山下の手に当たったという判定だった。
4月23日のルヴァンカップ第5節ジュビロ磐田戦でも、ネットを揺らしながらオフサイドの判定でゴールはならなかった。だから、「自分自身にはアシストやゴールという結果が必要だと思っています。いいパスを1本つなげたとしても自信になるかと言えばそうではない」という言葉にも、より一層の重みと深みが感じられる。2度にわたって失うことになった分も、喜びを取り戻す決意だ。
その瞬間を迎える道筋は、見えている。
「チームのために走って、体を張って、つぶれ役にもなって、がむしゃらなプレーを見せたい。それが自分の良さだから、続ければ点につながってくると思っています。まずはそこにこだわってやりたい」
ゴールへと続く道は、自分の強みを出して、出して、出し続けることでつくられる、という確信だ。奇しくも次の相手、サガン鳥栖からそれを学んだ。昨季1シーズン、スカイブルーのユニフォームを着てプレーした。
「一番、成長させてもらった1年間でした。初のJ1への挑戦ということもありましたし、いろいろな意味で成長を実感できて、自信もついてきたし足りないこともわかったし、濃い1年でした」
35試合9得点という数字を残したことには「チームメートのおかげでした」と謙虚だが、「形があれば点を取れるという自信もつきました」とストライカーとしての覚醒を経験した。
その鳥栖とはどんなチームなのか。
「去年からベースは変わっていないと思います。敵にしたら怖いチームですね。それは自分が一番よくわかっています。めちゃくちゃ細かいんですよ、守備の仕方も攻撃の前進の仕方も」
綿密に、戦術的に練り込まれたチームが、川井健太監督の就任によって、さらにその熟成度と強度を上げている。
「だけど、負ける気はしないですね」
山下は断言する。FC東京というチームに大きな自信を持っているからだ。アルベル監督のスタイルにも同様の緻密さが含まれるが、山下は少し異なる視点から逆にそ奥深さを表現する。
「決まりごとというところでは、そんなにないと思っているんです。だからこそ、自分たちの中で話し合って共通認識を持ってやれるかだと思うので、しっかり準備して備えたいと思っています」
弾力性が求められる細やかさ、とでも言おうか。だから、最後は決めるか決めないか、の世界線で生きているストライカーの血が騒ぐ。
「この古巣の鳥栖戦を自分の調子を上げられる一歩目に、ゴールを量産できる最初の試合にしたいので頑張りたいと思います」
準備はできている。
「大丈夫です、取りますよ」