上写真=味の素スタジアムで開催された国立競技場とFC東京の歴史を感じさせる写真展で、石川直宏CCがポーズ(写真◎FC東京)
初めてJリーグに触れた場所
ーー国立競技場を初めて訪れたときのことを覚えていますか。
石川 初めての『国立体験』は小学生のときでした。まだJリーグが始まる前、1992年にナビスコカップ(現ルヴァンカップ/Jリーグカップ)があって、国立競技場に見に行ったんです。対戦カードや試合内容までははっきり覚えていないんですけど、とにかく大きな会場だな、と思った記憶があります。
ーー将来、ここでプレーしたいという思いも抱いた?
石川 まだ、まったくそういう感覚にはならなかったですね。ただデカイなと。あとは地元横須賀から電車に乗って行ったんですけど、けっこう時間がかかった思い出がありますね。僕自身がJリーグをはっきり意識するようになったのは、その後のことでした。翌93年の5月15日、Jリーグ開幕戦。あのときも国立競技場にいて、そこでJリーグやプロサッカー選手という存在を意識したと思います。
ーーそれから7年後に今度は選手として国立競技場のピッチを踏むことになりました。
石川 デビュー戦ですね。
ーー2000年の4月1日、鹿島アントラーズ戦でした。
石川 確か鹿島のホームだったと思います。横浜F・マリノスの選手として初めてJリーグに出場しました。プレーしたのはアディショナルタイムを含めて数分間だったと思いますけど、2-2から3点目が入って横浜FMが勝ちました。勝利に貢献できたとは言えませんけど、プロとしてプレーすることや勝つことを最初に味わったのが国立だったのはラッキーだったのかもしれません。
ーー最初から国立競技場と関係があったと。
石川 世の中的には、FC東京で言えば平山相太が『国立男』でしょうけど、僕自身も節目節目でプレーしている場所という意識はあります。自分にとってのパワースポットというか。FC東京で初ゴールを挙げたのも国立競技場でした(2002年7月28日、札幌戦)。
ーーFC東京で初めてタイトルを手にしたのも、また国立競技場です。
石川 2004年のヤマザキナビスコカップでした。決勝の光景はいまでもはっきり覚えています。なかなか言葉でうまく表せないのですが、試合前も試合中も試合後もすごく気持ちが高ぶっていたことを覚えています。ファン・サポーターの方々にとってチケット争奪戦になったと記憶していますが、実際に競技場の中に入ってみたら、スタンドは浦和レッズのサポーターの方が多かった。半分以上は赤く染まっていたと思います。ただFC東京のファン・サポーターの方の声援もすごくて、最高の雰囲気の中で試合ができました。
試合としては本当に厳しい内容、前半にジャーンが退場し、浦和の猛攻を受けまくることになりました。体力的にも精神的にもキャリアの中であれほど苦しかった試合はないと思うほどです。ハーフタイムで足がつっていましたから。あれ以上の苦しみはなかったと思う(苦笑)。
ーーそして激闘を制して最後にカップを掲げました(0ー0/4PK2)。
石川 苦しみと喜びがあった試合でした。タイトル獲得そのものもそうなのですが、FC東京の歴史の一番先を走るのが僕らだと思って臨んだ決勝戦で、多くの先輩やスタッフ、ファン・サポーターの方々、クラブの歴史をつくってきた方たちの思いを一つの形にできたことが何よりうれしかったです。
ーー選手の方にピッチで感じる満員の『国立』は圧巻だと聞いたことがあります。
石川 代表では満員の国立体験があったのですが、クラブの試合では初体験でした。FC東京のユニフォームを着て満員の国立でプレーするのは格別でしたね。スタンドの鮮やかなコントラストに、モチベーションも上がりました。後半はファン・サポーターのいるスタンドに向かって攻めていく感じだったのですが、相当にしんどい試合でしたけど、顔を上げるとたくさんのファン・サポーターが待っていると。PK戦も東京のファン・サポーター側でしたし、一緒に戦うことができて、そして喜ぶことができて最高でした。
自分はスピリチュアルな感覚なんてまったくないのですが、やっぱりパワースポットというか、国立競技場には特別な力を感じます。カップ戦では決勝戦をやる場所ですし、高校サッカーの影響もあって国立競技場そのものに憧れる選手も多いですが、やはり他のスタジアムとは違う独特の雰囲気や魅力がありますね。個人的には、スタンドでいち観客として見ていたこともあるので、ピッチでプレーするだけで高ぶるものもありました。